『CALL』を観た話

TOHO MUSICAL LAB.のCALLを観ました。

 

劇場から離れて数か月、舞台作品の配信は何本か観ましたが、新作の配信を観るのは今回が初めてでした。しかもCALLはオリジナルストーリー。

なんか、生で観るのと違うのは当たり前だけど、過去作の配信ともまた違かった!舞台の初日みたいなTLの空気感で幸せだったなあ。みんなの新鮮な感想が溢れ出す感じ!

 

 

たつなりくんが出演したCALLも、Happily Ever Afterもどっちもよかった!見るたびに成長に驚かされる木村達成は配信でも健在でした!


 

 

 

応援しているたつなりくんを中心に、ここがよかった!というところをざっくばらんに書いていきたいと思います。(本当は全ての台詞回しの好きポイントを言っていきたいところだけど)

 

もしできたら、私の声の反響を澄んだ空気で包み込んで、どこか遠くまで運んでくれない?そして誰かに届けてくれない?

ミナモはお姉ちゃんたちよりも世間離れしているところがあって、静寂に向けて歌ってはいても、自分の声が誰かに届くということに小さな憧れを持っている。

このミナモの美しい言葉をぐっと近くに感じ想像力をかき立てられるのは無観客の作品ならではだと思いました。人が入っていない劇場の響きだからこその説得力なんじゃないかな?ミナモが音遊びをするかのようにステージを飛び跳ねる姿は空気に音を刻むようでした。

 

どのくらいのタイムラグで、あなたまで届く?

劇場にいたらタイムラグなんて考えることなかったかもしれない。同じ空間で同じときを、同じ熱量を共有できるのが劇場なんだな。

 

ごめん、素敵な歌だったからつい拍手しちゃって!

ミナモに「何してるの?」と聞かれて答えるヒダリメ。話し始めたヒダリメにプイと背を向けてマイクに歩き出したミナモを追いかけるように「つい拍手しちゃって!」が前のめりになるのが好きでした。

ヒダリメは遠慮がちに話す控えめな子かと思いきや自分の想いを相手に伝えるということに真摯な人なんだなあ。かつての劇場の様子をミナモに話して聞かせる姿は想いがほとばしっていました。

 

感謝を、伝え...たくて...

拍手を知らないミナモに「いい歌だとどうして拍手するの?」と聞かれ少し考えてこう答えたヒダリメ。

 

これが後から効いてくるんですよね。

オドリバがかもめの衣装に着替えてひとり歌うのを聴いて、思わず立ち上がってパンパンパパンパパンと拍手するミナモから一拍遅れて拍手を送るヒダリメ。

ここの表情がすごくいい!!

オドリバの歌に聞き惚れていたところからミナモの拍手の音で我に返り、慌てて拍手を送るという心の機微が繊細に伝わってきます。

オーボエ奏者の茂木大輔さんが「いい演奏の拍手は遅れてやってくる」とおっしゃっていたのを思い出しました。(余韻に浸っているので)

 

 

ミナモという名前

※すごく個人的な解釈

私はミナモ(=水面)と聞くと、波一つ立っていない鏡のような情景が浮かびます。

しかしそこに石を投げれば波紋が広がっていく。

ミナモって純粋で素朴で何にも染まっていないイメージなのですが、ヒダリメとの出会いで彼女の世界が広がっていく。純粋ゆえに、新しい知識や考え方が彼女自身によく響いていくことが“ミナモ(=水面)”にぴったりなのではないかなと思いました。

 

いや、惚れてはない

ここで2人は心を許したと思うんだ。砕けたやりとりができる相手だって。

冗談っぽく2人で顔を見合わせてふふっと笑う。

空気が柔らかくなって、心を開いてもいいかな...という仕草で恐る恐る後ろの手すりに寄りかかってみる。

こんな仕草1つで2人の心の距離を表現できるなんてたつなりくんすごい!言葉がないところのお芝居が雄弁だなあ!

 

どうして静寂で歌っているの?

ヒダリメって自分が知らなかった世界にも優しい人なんだなあ。というかこの作品の世界は否定するってことがないよね。自分の常識から外れていても「なるほど、そういう考えもあるのね」って受容してくれる。なんて優しい作品なんだ!

 

観客も知らないの?

言い方を間違えればトゲトゲしく聞こえかねないけど、たつなりくんが言葉に命を吹き込むと、これは純粋な驚きであって、相手を尊重しているのがわかる。

たつなりくんニュアンスを伝えるのが上手だなあ。

 

じゃあヒダリメは私の初めての観客だ!

って言われたときのヒダリメの表情の変化!好き!

最初「何言ってるの...?」って顔をした後にじわじわうれしさがこみ上げてくる。

この作品は何気ない台詞回しに無数のキラキラが散りばめられていると思います。

ずっと劇場専用のドローンとして生きてきたヒダリメ。フジワラさんとミズハシさんの思い出話をする様子を見る限り、ヒダリメは演劇や劇場そのもの、そして劇場に足を運ぶ観客ごと愛していたんじゃないかな。彼らを長い間見つめてきたヒダリメが、愛すべき「観客」と呼ばれたのは初めて。

なんだか心がほくほくとあったかくなります。

 

わからないな俺には。......俺は、この場所のことしか知らないから。

フジワラさんとミズハシさんを案じているのに劇場で起きていることしか知り得ないヒダリメの孤独。遠い目をしているのも切ない。良い意味でも悪い意味でも劇場がヒダリメの世界の全てなんだね。

 

♪君の名前呼ぶんだ

ミナモ:1000年前の名残たちも踊り始めたくなるよ

ミナモパートが1000年前

名残たち=ヒダリメ、かつて賑わっていた劇場、フジワラさんミズハシさんを始めとする観客たち?

ヒダリメ:1000年先のもしもたちも踊り始めたくなるよ

ヒダリメパートが1000年先

なのめちゃくちゃいい。

もしも=めいめいのこのツイートが全てだと思います。

 

時代や人は変化していくけれど、劇場という場所は変わらずそこにある。

ヒダリメが見つめてきた劇場がまた人で溢れますように。私たちが劇場で観劇できる日が訪れますように。舞台上に拍手を送れますように。

 

これから起こり得る可能性たちを“もしも”と表現する言葉選びの柔らかさ!

 

今を生きるミナモが過去を思い、過去を知るヒダリメが未来を歌う。

そして最後は全員のユニゾン

刻々流れるこの地点で今まさに踊り出すよ

過去と未来を繋いでいるのは今。ヒダリメとミナモたちが出会った今このときが過去と未来の中間地点。

 

そして“刻々流れる”の「こくこく」って響きがとてもかわいい。たつなりくんが歌うと100倍かわいい。

 

 

おねいちゃんいたの?(羽海野チカ先生風に)

小声。こしょこしょと。かわいい!

たつなりくん立派な26歳男児だけど時々バブみが出る。

 

 

 

 

カーテンコールの説明をするときの拍手がすてき!

背筋をピンと伸ばして手を少し前に出して。顎をちょっと上げて。

私はミュージカルに出るようになってからのたつなりくんのカテコのお辞儀や拍手が大好きで...。仕草に育ちがいい!!って思うのはもちろん、気持ち届けてるなあ!って伝わってくるのも大好きです。

例えばオケに拍手する姿。オケピにオケがいるときは、大きな身体を屈めて、できるだけオケの近くまで手を伸ばすようにして覗き込む。この拍手が大好きなんです。

かくいう私もスタオベで拍手するときは、腕を身体からちょっと離して胸より少し高くまで手を上げて「たつなりくん誇らしい!今日も最高だった!頑張ったね!今日も最高をありがとう!」という気持ちで拍手しているので、ヒダリメのこのときの拍手にはとても共感します!というか見た瞬間「これこれ!これが観劇の楽しさだよね!」という気持ちになりました。この感動をあなたに届けたい!って思うんだよね。

 

 

オドリバの「いいじゃん」

オドリバが静寂に歌う理由がしっくりきました。

「景色に聴いてほしいって思って歌ってるよ」

 

「景色に私の歌が映えるんじゃなくて、私の歌に景色が映えるの」という台詞は一見すると自分中心の言葉に聞こえてしまいますが、むしろ逆転の発想で。

ミナモの思う「誰かに聴いてほしい」の対象がオドリバにとっては「景色」。だから、ずっと静寂に向けて歌う活動をしてきたお姉ちゃんたちが「カーテンコールを聴きたい」というミナモの考えにすぐさま賛同する柔軟さがあるのか。

 

 

この後鳩サブレの話に逸れていくけど、オドリバの言葉を聞いたミナモがどう思ったか知りたいなあと思いました!

CALLは30分という限られた時間に物語をおさめているので、きっと描かれていないエピソードがまだまだあるんじゃないかな?と予感させますね。

 

例えば、謎に包まれている1番上のお姉ちゃんのシーナ。ストロングゼロの500ml缶とペヤングが似合いすぎるシーナの存在が気にならないわけがない!この妹たちにしてこの姉あり。

そしてヒダリメはどうなるのか。姉妹バンドはこの先も旅を続けるだろうから、また劇場に1人になるのかな。「翼が壊れてるから飛べない」という言葉にどこか悲壮感も漂いますが、どこにも飛んでいけないから、この劇場で孤独になるから悲しいというのはちょっと違う気もして。

ヒダリメはこの劇場をとても愛しているから、ミナモたちとどこか新しい場所に旅立つよりも、劇場が活気に溢れて拍手の音が響き渡る日を待ち望んでいるんじゃないかな。“1000年先のもしもたち”が劇場にやってくるその日のために、ここに居続けることを選ぶんじゃないかな、なんて。

 

 

あー早く劇場に行きたい。

わくわくしながらチケットをバッグに詰めるあの瞬間も、劇場に向かう道のりも、劇場独特の匂いも、毎日のように顔を合わせることになるもぎりのお姉さんも、案内アナウンスをするいつものお兄さんも、終演後にはやる気持ちを抑えてツイッターにレポを書くあの時間も、劇場から出たときの高揚感も。

今は全てが愛おしい。

 

感動したから心の底から拍手する。ステージ上の相手に届けるために拍手する。そんな愛すべき日常が帰ってきますように。