ミュージカル『ファントム 』を観た話

 

黒い燕尾服とぴかぴかに磨き上げられた革靴。ヒールは生まれながらのスタイルのよさを引き立たせ、カラフルな街灯が並ぶパリの街角で運命の女性の肩を抱き、軽快にステップを踏む。

 

そんな木村達成さんが観られる舞台がミュージカル『ファントム』です。

 

 

“運命の出会い(Who could ever have dreamed up you)”で♪どんな願いでも 叶えてあげよう〜!とクリスティーヌの肩を抱いて空に手を伸ばすシャンドン伯爵が本当に好き!

あそこ毎回心の中で「流れ星〜〜!!」って思っていました笑 たつなりくんが夜空に手をかざすと流れ星が流れますね!!!!

と同時になんてすごい役者さんを応援させていただいているんだろうと感動していました!これからもっともっと舞台上で輝くんだろうなあ〜!!

 

 

今回は応援させていただいている木村達成さんが廣瀬友祐さんとWキャストでシャンドン伯爵を演じたミュージカル『ファントム』について書きたいと思います。

ロミジュリ、エリザベートに続き今年3作目のミュージカルでした。やっぱりミュージカルは楽しい!歌っているたつなりくんも大好きだしたつなりくんの歌声も大好き!今回シャンドン伯爵の見せ場と言えばクリスティーヌと歌い踊る“運命の出会い”でしたが、たつなりくんのオタクが大好きで今でもまた観たいと繰り返す『ラ・カージュ・オ・フォール』の“アンヌと腕を”のハッピー感とこれまたそっくり!!オタク大歓喜でしたね!!また観たいなあ!!

女の子と一緒にいるとかわいさが100万倍になることに定評のあるたつなりくんなので、ちゃぴさんとはるかちゃんどちらの組み合わせでもそれぞれとってもキュートでときめいてしまいました!

そしてエリックは和樹さんと城田さんのWキャスト!Wキャストで観る側の解釈がこんなに変わるんだと驚きました。インタビューやSNSでのやりとり、お二人が登壇した12/8のスペシャルカーテンコールを見て、かつて一騎打ちをした戦友が2019年現在もお互いにリスペクトして切磋琢磨しあえる関係なのが素敵だなあと思いました。

  

 

11/11夜 加藤・木下・木村

11/16昼 城田・木下・木村

11/17夜 城田・木下・木村

11/23昼 加藤・愛希・木村

11/24夜 城田・愛希・木村

11/30夜 城田・愛希・木村

12/07昼 加藤・木下・木村

12/08夜 加藤・愛希・木村

12/14夜 城田・木下・木村

12/15夜 城田・愛希・木村

 

 

 

 

 

 

 

いきなり余談ですが、(※飛ばしてください)このブログを書いているときに高校の現代国語の授業で、物語を一つの文にまとめる学習をしていたのを思い出しました。石原千秋『小説入門のための高校入試国語』(2002、NHK出版)に載っていたものを高校の先生が実践していたんですね。

 

小説入門のための高校入試国語 (NHKブックス)

小説入門のための高校入試国語 (NHKブックス)

  • 作者:石原 千秋
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2002/04/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

フランスの批評家ロラン・バルトの「物語は一つの文である」という立場にならって石原千秋が提唱している方法です。「〜が〜をする物語」(主人公の行動をまとめる)や「〜が、〜になる物語」(主人公の変化をまとめる)といった基本型にならって物語を要約した一文を作ります。

例えば『走れメロス』だったら、「メロスが約束を守る物語」とか「人間不信だった王が、人間を信頼するようになる物語」みたいに。この場合、前者はメロスが主人公、後者は王が主人公の物語として捉えることができます。

物語とは「はじめ」と「終わり」とによって区切られた出来事のことであって、「はじめ」から「終わり」に進むにつれて、主人公がある状態から別のある状態に向かって移動したり(〜をする物語)、変化したりする(〜になる物語)のである。リアリズム小説を基準に考えると内面が明かされるのが主人公であったが、物語を基準に考えると移動したり変化したりする人物に主人公の資格があることになる。その移動や変化を一文にまとめたのが物語文である。(p41)

 

 

 

 

 

余談が長くなりました笑

これを『ファントム』で実践してみたいと思います。

 

 

 

 

 

 

私がミュージカル『ファントム』を一文にまとめるならば、

“怪人”エリックが“人間”エリックに還る物語

 

 

今回の物語をどうしてもラブストーリーだと捉えられなくて。(私ラブストーリーって苦手なのかもしれないって最近気付いたんですけど)

エリックのクリスティーヌへの感情は恋愛感情だったのか?とか、結局のところクリスティーヌはエリックを愛していたのか?とか。考えれば考えるほど泥沼にはまっていく...

 

 

うーんと思いながら東京公演を経て、12/14夜公演で久しぶりに城田さんエリックを見てハッとしました。

そのときのTwitterの下書きです。

 

城田さんエリック

・HOMEで上を見上げて顔を見ようとしたクリスティーヌに「ダメ!」←すごく子どもの言い方

・自分を子どもだと思ってる、地下にいるから時の流れがわからない、どれくらいの年月が過ぎたのか

・でかい図体になったことに気づかず育った

・心と身体のちぐはぐ、でこぼこ

・二面性、心には怪物を飼っている、コントロールできない(怒りで爆発するエネルギー)

・キャリエールとの階段での場面...ただのエリックに戻った。ちぐはぐ、でこぼこが消えた

 

 

そしてこれを書いている今、改めてフライヤーを見返してみたら、なんだ!答え書いてあったじゃないの!

「彼女の歌声は、僕を光の世界へと導くーそれは母の愛のように

哀しくも美しい...人間ファントムの物語。」

 

「人間ファントム」!これだ!私が言いたかったことは!

人間とファントムっていう対極にあるものが共存しているというか、同じ文脈にある!

 

そして、あれは母の愛だよね!母性愛だよね!

(ただ和樹さんのエリックは大人な印象だったので恋愛の意味でも好きだったかな、と思いますので後述します)

 

 

 

 

『人間』から『ファントム』に、『ファントム』が『人間』に還元されていく

 

エリックは怪人なのか

まずタイトルロールの「ファントム」という言葉。作中に「あの人の声って僕の顔より酷いよね?」というジョークめいた台詞もありますが、エリックは化け物として生まれていない。母親は彼の醜さに気づかず、美しいものと疑わずに育てた。そしてずっと地下にいて人目に触れなかったので、その醜さを指摘する人もいなかった。オペラ座の幽霊伝説は少年エリックが夜な夜な泣き叫ぶ声が響き渡って生まれたものなので、顔が醜いからオペラ座の怪人と呼ばれていたわけではないんですよね。

 

 

キャリエールとベラドーヴァの間に生まれたエリック

8歳のとき水に映る自分の姿を見てあまりの醜さに絶望する(←少年エリックの嘆きの泣き声、“化け物”の顔だと認識)

美しいものを求めながら人目につかぬように地下に閉じ籠る日々

クリスティーヌ(探し求めていた美しいもの)との出会い

“君は私の全て”で父と息子の回顧

自ら望んでキャリエールの手で銃殺させられる

クリスティーヌの腕の中で息絶える(クリスティーヌが仮面を取る)

 

 

こう考えてみるとエリックの人生の中で山と谷のような、起伏があるように思えます。イメージとしては数学のグラフの放物線です。

 

エリックはキャリエールとベラドーヴァの間に生まれ、ベラドーヴァの生き写しのようなクリスティーヌによって愛を知り、父親であるキャリエールの手によって命を終わらせられる。そしてクリスティーヌ(≒ベラドーヴァ)の腕の中で息絶える(≒産まれたところに還る)。

 

「クリスティーヌ≒ベラドーヴァ」はクリスティーヌ役のちゃぴさんと晴香ちゃんが兼役されているのでそう解釈しました。

 

ここでベラドーヴァが子守唄として歌っていた“Beautiful Boy”をクリスティーヌが歌うの母胎回帰っぽくないですか?続けて“あなたこそ音楽”をデュエットしたところでエリックの命は尽きます。

 

“君は私のすべて”で心の仮面を剥がす

 「あなたも見る?僕の顔」から始まる父と息子の語らいの場面。

キャリエールが父親だと打ち明ける“君は私のすべて”で私はなぜか居間で寛ぐ親子を連想していました。(イメージとしてはサザエさんのちゃぶ台を囲む夕飯の団欒のシーン笑)

「ねえ、僕が水に映る自分の顔を見た日のこと覚えてる?」「ああ、覚えているとも!」のシーンです。

 

それまでのキャリエールさんはオペラ座の元支配人で、燕尾服をカッチリと着こなす紳士のイメージ。しかしここでは胡座をかくんですね。エリックと肩なんか組んじゃったりして。

ここでエリックはマントを翻す怪人ではなくただの1人の息子になる。さらに言うとファントムという肩書が外されただの人間になる。

キャリエールさんが心の鎧を外すと同時に、エリックも自分を武装していたものから自身を解放したように見えました。

キャリエールさんはエリック自身から水に映る顔を見た日のことを切り出されたので安堵したことでしょうね。だってあの日のことをキャリエールはトラウマレベルでずっと忘れられなかったと思いますから。自分だけが知っていればよかったエリックの顔の醜さを本人に知られたことで、この世に存在する醜さにしてしまったから。

「仮面を与えると少しは気が紛れました。...少なくとも私は」

先程ちぐはぐ、でこぼこが消えたと書きましたが、ここがエリックが人間に戻るポイントの1つだと思います。

 

エリックの最期 

ところでエリックとクリスティーヌが「デュエットしようと思ってデュエットした曲」って意外なことに“あなたこそ音楽”だけなんですよね。“HOME”や“レッスンのはじまり”でもしてるけど、“HOME”はクリスティーヌが相手の存在を認識していないし“レッスンのはじまり”はあくまでレッスンって感じがするから...

つまりエリックにとって「クリスティーヌといえば」っていういわゆる「クリスティーヌの代表曲」って“あなたこそ音楽”だと思うんです。

死ぬ間際に歌われた曲が“Beautiful Boy”から“あなたこそ音楽”になるってなんて素敵な演出!って思いました。ベラドーヴァからクリスティーヌに...。エリックに愛を注ぐ人物が増えたんだなあと思いました。

あそこのシーン、クリスティーヌとベラドーヴァの境界線がぼんやりしている。両方のあいだを揺蕩っているような。でもベラドーヴァの幻影じゃなくて確かにそこに存在しているクリスティーヌという人物がエリックを愛している。

クリスティーヌと出会ってエリックは幸せだった。今までの暗闇の日々に優しい光が差して幸せだったんだ。と言いたい私がいます。

 

 

 

 

曲ごとに印象に残ったこと

とにかく大好きな曲がたくさんあるんです!全部好き!

 

“パリのメロディ”

客席から「♪ラララララン」ってハミングが聴こえてきた時点でクリスティーヌに恋に落ちてしまう!ちゃぴさんも晴香ちゃんもかわいい!

クリスティーヌが持っている茶色いかごから楽譜を取り出しますが、結構サイズがキツキツで1回ちゃぴさんがかごに楽譜ケースを戻せなくてガツッ!えいやっ!と押し込んでいたのでパワータイプのクリスティーヌで笑っちゃいました、そんなところもかわいい。あと11/23昼公演では頑張ったけど入らなくて楽譜ケースを手に持ったまま♪パリはクレイジー!で楽譜飛ばしてましたね笑

 

ここのシャンドン伯爵の紫の衣装も大好きです。

たつなりくんのFCイベでお話がありましたが、デビューのテニミュから体重は維持しているみたいです。でも魔界転生では衣装がお着物だったので似合うようにするためにガンガン食べ少しふっくらした。ロミジュリはそのままいって、エリザベートカリカリになり(痩せたことの表現がカリカリって独特すぎる笑)、観に来たロミジュリカンパニーの皆さまに「たつなり痩せたね~」と言われ、次のファントムではカリッカリになったそうです笑(だから表現笑 本人も「ベーコンみたいにね」なんておどけてましたが笑)

そんなカリッカリ状態で挑んだ紫燕尾服とシルクハット。腰の切り替えが素晴らしく似合ってた!ロミオの古川さんじゃないけどペラッペラでした!腰の位置高い!スタイルよい!

取り巻きの女の子たちを軽くあしらって「仕事仲間でね」なんて言っちゃうあたりプレイボーイ。

「美しいものには目がなくて」って言葉は後にエリックも言っていますから、2人は相反しているようで美しいものを求めているという点でクリスティーヌに惹かれたのは同じなんですよね。本番前のクリスティーヌにプレゼントするのが赤いバラ1本とピンクのバラの花束だという対比も同様に。

このシーンはたつなりくんの手の美しさも際立っていました。名刺を取り出してスラスラとキャリエールへの言伝を書いてクリスティーヌに渡す。この一連の流れで育ちの良さが十分伝わったのではないでしょうか?人差し指と中指で名刺をつかむの好き。あと別れ際クリスティーヌの手を取ってキスするときに必然的に上目遣いになるのもずるかった!なんてずるい男だシャンドン伯爵!

 

少年エリックが兼役で靴磨き屋さんをしていましたが、果物屋さんのお姉さんと手を取って踊っていたのもかわいかったです。

 

“今宵のために”

オペラ座に通う貴族たちと裏方さんたちの掛け合いが楽しい。

華やかなミュージカルナンバーで、東京ディズニーランドで先日公演が終了したワンマンズ・ドリームⅡ-ザ・マジック・リブズ・オンの映画撮影とハリウッドを思い出しながら観ていました。

「♪着飾って夢を見ましょう」で1列に並ぶところのジャン・クロードの仕草がかわいくて見入ってしまいました。「♪着飾って」で服をサッサッサッって払うところと「♪パリ オペラ~」で伸ばすときの足の形が好きです。

 

“世界のどこに”

赤坂の音響正直あまりよくなかったじゃないですか。梅芸に来てから聞き取れるようになったところが多々あって。「♪行けすぐに」も梅芸初日に「ああ、行けすぐにね…!」ってわかった。なんか難しい日本語言ってるから聞き取れなかったんだと思ってました笑

この曲は2幕でエリックがカルロッタを殺しに行く前にもリプライズで歌われますよね。そこにエリックの二面性が表れているなあと思いました。

1幕では「見つけたぼくの夢を 世界のどこにいても手に入れる」の言葉通り、地下に閉じこもっていても美しいものを探し続けるという純粋なエリックの思いの歌のように歌われます。ところが2幕はクリスティーヌを陰謀に陥れようとしたカルロッタへの復讐の歌に変わるわけです。

これ、どちらも同じメロディーラインで歌われているのが面白いと思って。エリックのクリスティーヌへのピュアな愛情と復讐の憎悪の感情が紙一重なことの表れだなあと思いました。

 

“私のもの”

カルロッタオンステージ

すごすぎる!圧倒的パワーを感じる!

カルロッタがディズニーの悪役みたいという感想をよく見ていたのですが私もまさにその通りだと思いました!ただ悪いだけじゃないというか、悪役ポジションにいるのはわかるのにお客さんは愛すべき人物と見てしまう。そんなところがディズニーの悪役「ヴィランズ」との共通点かなと思います。

そもそもウォルト・ディズニーが彼らをヴィランズと名付けたのは「悪役がいるからこそ正義が輝く」という信念があったから。悪役を蔑ろにしてはいけないという愛称として名付けたんですよね。

カルロッタもその信念の通り、まさに愛すべき悪役だと思います。

カルロッタのオペラ座愛が伝わる歌詞があります。

「♪熱く燃えて 夢を掴んで 輝いてこそ私よ」

どうです?テニミュみたいなど根性精神!私自身は体育会系という言葉が大嫌いなんですがこういう青春!汗!涙!みたいなのは大好きです笑

8代目越前リョーマ役のふるたかずきくんの名言「熱しかねえ...」を思い出してしまいます。カルロッタのオペラ座にかける想い、熱しかねえ...

 

“HOME”

曲が始まる前にクリスティーヌが衣装ワゴンを押してくるところからもう素敵。このときの衣装はちゃぴさんはグリーンで晴香ちゃんは水色なんですね。カルロッタはオペラ歌手の素質があるか服装でわかるわ!と言って、クリスティーヌを野良仕事をしている田舎娘と一蹴していましたが、私はこの衣装すごく好きです笑

梅芸に来てから「木管のトリル」でフルートのトリルがちゃんと聴こえるようになってうれしかったです。それからエリックパートでクリスティーヌが誰も見ていないと思ってこっそりシルクハットを被ってふふふってするのかわいかった!

 

“あなたこそ音楽”

オーボエの音色が好きです。

最後の「♪私の(ブレス)人生」で息を揃えるところが好きで、晴香ちゃんとのペアだとエリック主導で音楽を紡いでいる感じがしました。‪和樹さんのエリックは大人な印象だから晴香ちゃんとのペアだと年の差が顕著。側から見ればエリックは才能に惚れ込んで年の離れた恋に落ちたように見えました。晴香ちゃんクリスティーヌはエリックのことを先生として見てる部分が大きいかも‬しれないです。

ちゃぴさんとの組み合わせだと、2人の呼吸がどんぴしゃりと揃う瞬間がわかるんですよね。同じようなことがエリザベートの“私が踊る時”でもあって、ラストの「♪踊る時は 全てこの私が 選ぶ」の合わせるポイントです。私ちゃぴさんの“私が踊る時”大好きなんですよ!花總さんとちゃぴさんでシシィの人生の最高潮が違う気がして、花總さんは“私だけに”のリプライズ。白いドレスで振り向くところから「♪ただ 私の人生は私のもの」で「あなたの言うことは聞くけど私は一筋縄でどうにかなる女じゃないのよ」とフランツを一度拒絶するところが輝かしい。

対してちゃぴさんシシィの最高潮は“私が踊る時”。トートに好きなようにやらせておきながらも絶対にあなたには従わないという挑発するような目つき。今まではトート>シシィのパワーバランスだったのがここではバチバチに戦っていてお互い一歩も引かない。お互いに強い力で押し合っているからこそ倒れない。

ファントムではそれが相手への絶大な信頼感となって出ていた気がします。このタイミングでブレスして歌いだすことに全く迷いがないのがエリックとクリスティーヌの関係性に繋がっていたと思いました。

 

“ビストロ”

はいきましたビストロです。伯爵の出番ですよ!

黒燕尾服白手袋は正義なんで!圧倒的勝利!おめでとうございます!

燕尾服のジャケットの前後で丈が違うのって男性のスタイルをよく見せるためなんだな…とたつなりくんの燕尾姿を見て初めて気づきました。パンツの側章がこれまたスタイルのよさを引き立てていますね。クリスティーヌをエスコートして椅子に座ったときの足の長さ半端ないし、横からのアングルだと革靴のヒールが強調されて最高。

そういえばエスコートするときに「君も歌ってくれる?」が「君も歌うよね?」のゴリ押しバージョンに変わったことも2回ぐらいありました笑 

カルロッタが歌っているときのシャンドンの表情も何気に好きでした。クリスティーヌは純粋だから(歌の良し悪しもあまりわからないのかな?)うんうんって笑顔で聴いてるし、シャンドンに「ひどい歌だね」って耳打ちされたときも「あら、でもこういうところが素晴らしいと思うわ」ぐらいは返していたと思うんですけど、その点シャンドンは伯爵だから教養があって、良いものは良い、悪いものは悪いの尺度があるんですよね。

でもあからさまに悪い顔はできないから、「やれやれ」とか「困った人だなあ…」って表情をしているのがよかったです。

ここの感覚がたつなりくんすごいなあと思って。すっごく個人的なところで申し訳ないんですけど、日本人ならそれさえも隠すというか、肩をすくめることさえできないと思うんです。あからさまに本人に伝えるのはマナー違反だけどちょっと仕草でやってみるみたいなお芝居の感覚が面白かったです。

あとビストロでクリスティーヌの1番熱心なファンはシャンドン伯爵だったので、拍手するタイミングも大体たつなりくんが1番早かった笑 白い手袋を外して準備万端!拍手すれば顔の近くでするからマイクの近くで爆音!めちゃくちゃ笑顔!かわいい!

伝説の拍手フライング回は11/30夜公演でした。

 

そして興奮しすぎてピアノの近くで“パリのメロディ”歌ってるときに普通3回目でピアノにストップかけるのに1回目でストップかけちゃった回もあり、どんだけクリスティーヌ大好きなの、かわいい。

 

“運命の出会い”

かわいいの権化。

街灯からひょっこり顔を出すシャンドン伯爵もかわいかったし、めちゃくちゃぴょんぴょんジャンプするのに声ぶれないで歌うのすごいなあ。

 

以下はたつなりくんのFCイベントでお話していた内容を含みます。

グラス投げは成功したり失敗したりしましたが、稽古場では1回も成功したことがなかったそう。稽古場では高さの関係で本番のセットよりも低い柵だったそうです。小屋入りして本番のセットでやってみたらちゃんと入って、スタッフさんに「たつなりいけるよ!!」とGOサインが出てあのパターンでやることになったみたいです。

正直ずっとオペラグラスでシャンドンさんを定点していたのでグラスが入ったかどうか見る余裕は前方席に入ったときしかなかったのですが笑、投げるときにセットに近寄りすぎたときがあったみたいで、自分でも近すぎる!とわかったのでいつもより投げる軌道を高くしようと頑張ったたつなりくん。放物線を高くしようとしたと言っていました笑 結果真上に投げすぎて柵には入らず!それが自分の頭にたらい落としのように落ちてきそうになったのもギリギリで回避!その後グラスがどうなったかというと、床で跳ね返ったまま袖に入っていき万事休す!ということでした笑

 

ただこの曲でシャンドンとクリスティーヌってお互いに心惹かれあっているようですれ違ってるのが面白かったです。歌詞がだいぶあやふやなのでニュアンスですが、「♪もう一度正直に あの歌は6点か、7点?」「もっと!(かわいい)」「♪ありえない、8点までよ。もっとなら夢のよう!」のところとか、「♪ああ!クリスティーヌこれは恋!」「あのトリル苦手なの!」とか。

掛け合いをしているようで実は自分のことしか話していない笑 ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 全国大会 青学vs立海 前編の“雑魚”の柳さんと赤也ちゃんのようにね。(急に地獄絵図の話を持ってくる)(治安悪くなった)

 

“崩れゆく心”

今回から追加になったエリック、クリスティーヌ、シャンドンの三重唱。たつなりくんどんどんよくなっていったなあという印象です。

直前のキスシーンの話から始めていいですか?勝手に始めるんですけど!

100万回言ってるけどオフでの「愛してる(囁き)」はずるい!!!

花束持って登場するところはワンマンのミッキーでした。オペラ座前の花壇からでも摘んできたのでしょう。引っこ抜いたものをそのまま花束にしてプレゼントすな。(嘘です、伯爵家御用達の花屋さんから調達したのでしょう)

話は戻って三重唱ですが、シャンドンとクリスティーヌのキスシーンを見て絶望の淵にいるエリックと、幸せの絶頂状態の夢見るシャンドン伯爵でこのときの精神状態は天と地の差がありますよね。

これがメロディに表れていると思ったのが、

エリック:それでも呼ぶよ君の名を

シャンドン:夢の中で君の名を

のフレーズです。エリックパートは「そ(→)れ(↑)で(↑)も(↑)呼ぶよ」で上昇(音自体は下がってるけど「れ」で一気に上昇してその後も声は上に引っ張られてるから)、シャンドンパートは「ゆ(↓)め(↓)の(↓)な(↓)か(↓)で(↓)」で下降なのがブラームス交響曲第1番冒頭の半音階上昇のヴァイオリン、チェロと下降音形の木管、ホルン、ヴィオラの関係みたいだなあと思って聴いていました。これは2人の心の距離みたいでどんどん離れていく様子かなあ。2人は相容れないしクリスティーヌへのアプローチの仕方がまるで違うから。

それにしてもここのたつなりくんは低音が安定していたと思います。響かせ方はまた別問題としても、三重唱で一番下のパートが安定してるって結構重要ですよね。音がブレるといった問題は軽々クリアしてやっていたなあという印象です。これはブログで言っていましたが、高音に比べてどちらかと言うと低音は難しさを感じるみたいですね。テニミュで三部に分かれるときは安定の低音パートだったのでちょっと意外な気もしますが、ミュージカルの発声が変わったんですね。

 

 

“君をなくせば”

この曲本当に美しくて大好きです。メロディーラインもセットも。幕が開くと緑がかった地下が現れ、ゴンドラを漕ぐエリック。贅沢に使われたハープ。

この曲って薄暗くてお世辞にも綺麗とは言い難い地下の用水路的な場所で歌われていますよね。(パンフレットを読むと貯水槽かな?)

でも私は作中で最も色彩が鮮やかで夜の匂いがしてくる場面だと思いました。緑がメインのセットだけど濃いピンクや濃紺のイメージ。

ロマンチックなメロディーライン、ハーモニーにどことなく漂うドビュッシー感というか。ドビュッシー管弦楽のための『映像』のイベリアとか、ラヴェルマ・メール・ロワのパゴダの女王レドロネットみたいなイメージ。

 

 


Claudio Abbado "Images pour Orchestre No 2 "Iberia" Debussy

こちらの7:00あたりから第2曲が始まります。でも全曲通してとっても素敵な曲なのでぜひ聴いてみてください。

 


マ・メール・ロワ第3曲「パゴダの女王レドロネット」

 

どちらもスペインや中国を舞台に書かれた曲ですが、私の中で「フランスの作曲家から見た異国のイメージってこんな感じ」といった曲です。この場面にどことなく漂う東洋感みたいなものがあって、例えばエリックがクリスティーヌを運ぶゴンドラの船首の飾り。ドラゴンかな、タツノオトシゴかな。

フランス人が異国感を出しているところがあえてフランスっぽい、そんな曲です。対してフランス人が作ったフランス人らしい曲といったら“パリのメロディ”や“ビストロ”ですね。

イベリアの第2曲は“夜の薫り(Les parfums de la nuit)”と名前がついていて、夜道にどこからともなく漂ってくるかぐわしい花の香りをイメージして聴いてしまいますが、ファントムの“君をなくせば”もそんなイメージです。

スモークと照明の効果をふんだんに使って揺らぐ水面や靄を表現したりステージ上そのものも美しかったなあ。

 

“エリックの物語”

♪ランランランララン ランラララランラランラ

劇場を出た後思わず口ずさみたくなるランランランララン(ランランランじゃないよ)(走り続ける理由じゃないよ)(どすこいどすこいどすこいどすこい)(青7のせい)

少年エリックの天使のような歌声に毎回ウッ...(涙)となっていました。

それにしても晴香ちゃんって何者?!歌だけじゃなくてダンスもできるのね!

ベラドーヴァのバレエシーンでは手足の使い方がとにかく軽やかで羽が生えているみたい!アヴェ・マリアのコンテンポラリーは体が別の何かに乗っ取られてるみたいな異物感というか。「虫唾が走る」という言葉がぴったりな体の使い方。ジプシーから薬草を買ったベラドーヴァが自分ではコントロールできない何かが体を這っている感覚なのかな。保健の授業で薬をすると自分の体に虫が這っているのが見えるとか習ったでしょ?あんな感じなのかな...怖い...

 

“森の散歩”

2幕のセットの話を。

2幕の前半はエリックが住む地下を舞台に繰り広げられます。緑の幕で覆われたセット、天蓋付きのベッド、天使、バラの花、小鳥...全てエリックによって作られた幻想空間なのかな。クリスティーヌが地下に来ると子供部屋みたいな空間が出来上がり、クリスティーヌが顔を見て地下を去るとエリック自らが緑の幕を取り払い幻想空間を壊す。

エリックが大切に大切に作り上げた美しいもので囲まれた夢のような心安らげる黄金のテントは、呆気なく崩れ去る。なんて皮肉なことでしょう。

 

“母は僕を産んだ”

ファントムで1番好きなナンバーです。Apple Musicで城田さんが歌っているのを買いました。

城田さんエリックの“母は僕を産んだ”ではっとしたことがあって、それは歌い出し。

白い花びらが舞い低音が鳴るなか、地に伏せたエリックは呟くように歌います。

母は闇で僕を産んだ

でも僕の魂は 天使のように輝く

けれど僕は闇にしか住めない

この「けれど僕は闇にしか住めない」ですけど、「けれど僕は 闇にし...闇にしか 住めない...」って言い直すときがあって、しんどいしんどいしんどい!

エリックはウィリアム・ブレイクの詩を幼い頃から読み返していたんですよね、何度も何度も。地下に篭って外との関わりはキャリエールぐらいしかなく、ブレイクの詩もキャリエールさんが幼いエリックのために持ってきてくれたんでしょうか。それとも亡くなったベラドーヴァの形見でしょうか。

空で言えるくらい読み込んでいたその詩は絶望の中にいても口をついて流れるように出てきます。でも「けれど僕は闇にしか住めない」で自分が本当に闇にしか住めないことを悟ってしまった。その現実を思い知ってしまった。だから絶望した。

辛いのは城田さんが歌詞の言葉をそのまま辿るように紡ぐことです。直前の「天使のように輝く」なんて微笑みながら宙に手を差し出すんですよ。本当に自分の魂は天使のように輝くと信じてやまないように。

そこから先もエリックは言葉の意味を噛みしめながら歌います。歌詞の美しさを咀嚼すると自分の心が美しくなるみたいに歌っているのが印象的でした。敬虔なエリックそのものだなあと思いました。

「ああ 片隅の地に生まれ」ってところで毎回涙腺が弱くなってしまって、どんなに悲しい歌詞でも美しいメロディに乗せて歌うのが余計泣ける。

それからエリックって本当に優しい人なんだなあと思うのが「僕が雲を作ろう 君は神の膝でお眠り」。「お眠り」の言い方がね......小首傾げながら「お眠り?」なんて言うもんだからエリック〜〜お前ほんとにいいやつだよ〜〜〜になってしまう。すごいよ城田さん。だって本当に神様と対話してるみたいに歌うんだもの。

ところが美しいメロディに乗せながらも「僕に背くならば!」から語気が荒くなります。“世界のどこに”と同じようにエリックの二面性が出ている部分だなあと思いますが、前半までの神への美しい祈り、母やクリスティーヌへの愛と平行して歪んだ感情が存在している。台詞でもありましたね、「もっといい場所に早く行けるだけさ」と。

ここの怒りの表現がお二人ともすごかった、すごすぎて怖いくらいだった。最後の「クリスティーヌ!」って叫びも真っ直ぐ愛を叫んでいて毎回泣いてました。

 

 

 

 

 

ということで長々と振り返ってしまいましたが、私はたつなりくんのオタクなので最後はやっぱりたつなりくんの話で締めたいと思います。

今回のシャンドン伯爵は難産だったようで、FCイベントでも初めてWキャスト(という制度)が嫌だと思ったって言ってました。「ヒロくんのシャンドンは僕がやりたかったシャンドンだった。僕が行きたかったところにいた。だから悔しかった」と。

そんなときに「たつなりらしいシャンドンって何かなって考えてみたんだけど。たつなりの良さって笑顔だと思うんだよね。あと真っ直ぐなところ。それをシャンドンに生かしてみたら?ヒロみたいなスマートでかっこいいシャンドンをやりたいんだろうけど、そんな伯爵もいるんじゃない?」と声をかけてくださった城田さん。ありがたいねえ...役に忠実になることで自分を殺すんじゃなくて自分の個性を活かす方向で演出をつけてくださった。たつなりくんはいいカンパニー、いい共演者の方に恵まれているなあとどの作品でも思います。

 

冒頭の「〜が〜をする物語」に戻りますが、ファントムでのたつなりくんを表すとこんな感じかな。

たつなりくんが自分のシャンドンを見つけ出す物語

たつなりくんが自分らしさを見つめ直す物語

 

 

2019年も終わりですがたつなりくんのおかげで本当に楽しい1年でした!2020年のさらなるご活躍を楽しみにしております!突っ走っていくたつなりくんを見失わないようにこちらも全力でついていきたいと思います。