ミュージカル『プロデューサーズ』を観た話

♪広めてよ〜いい噂!嫌いなら何も言うな!

ということでいい噂、というか感想です。千秋楽終わっちゃったけど!終わったことが悲しすぎる...。初日前はこんなにロスになると思わなかった...。本音を言うと不安もあった。けど!蓋を開けてみればメインキャストさんもアンサンブルさんも歌もダンスもセットも衣装も楽しかったです!

 

コメディーだし、難しいことを考えずに楽しんだもん勝ちなのかなと思ったのでそんなブログです。笑いたくてショー観に来る 観客悩ませてどうすんの?元気になるハッピーエンド!なので、いつも以上に楽しかったところの羅列になりました。

 

 

 初日を迎えたたつなりくんはこれの数倍ギア入ってたし仕草も表情も極まってた。

 

 

 

初日よ〜ブロードウェイのキング

オーバーチュアが始まって可知寛子さんと福田えりさんが飛び出して来るだけでワクワクする。

さっそく余談だけど、可知さんはファントムのロビーでシャンドン伯爵を探していらっしゃったりYouTubeでミュージカル関係の面白い動画をあげている方という印象が強くて。でもよくよく考えたらエリザ2016のマデレーネだったんですね!円盤でしか拝見したことないのですが...。今回はチームロジャーの照明係までされて...すごい(小並感)

それから黄色のワンピースに緑のカーディガンを羽織った煙草のお姉さんが好きでした!神谷玲花さんかな?おばあさまたちのシーンでもめっちゃかわいいおばあちゃんいる!と思ったら多分神谷さんだった!お顔が好き!

 

♪信用はないけど信じるよあんたを!

マックスって懐に入るのがうまいよな。


M1って「このミュージカルはこんな作品です!」ってお客さんに提示するものだと思うんだけど、芳雄さんは本当にすごい!アンサンブルさんたちもすごい!押し寄せるように、雪崩れるように、だけど抜群に安定して...この座長がいればどんな作品でも大丈夫と思わせるような圧倒的なパワーを感じました。

 

この回に入っていたんですけど、1つ2つのマックスの台詞がくぐもっててマイクトラブルかな?と思っていたらあっという間に直ったから音響さんすごい!と思ったらこういうことだったんですね。

 

 

出来るさ!〜なりたいよプロデューサー

Wキャストの2人でレオの人となりがだいぶ違うんだなあと思いました。

 

ロミジュリで初めましてだった大野くんは全体的にパキッとした印象で、歌声もお芝居も“““強”””、柔か硬かと言ったら硬みたいな。ジュリエットへの押しが強めというか。「ジュリエット愛してるよ!!君しか見えないよ!!!!結婚しよう!!!!!!」みたいな笑 

それが今回は大型犬みのあるレオになっていたような気がします。ウーラに対して真っ直ぐでピュアッピュアなところがなんか愛おしい。小顔で身長が高くて頭身がおかしい(褒めてる)のに好きなものに対してポンコツになってるギャップが好きでした。

大野くんのレオ、なんかYGCBにいそうだよね。ブランケット症候群だからかな?当方本公演見逃してTENTHのチケを取ったものの諸事情により流してしまった未観劇オタクですが......

大野くんの♪僕ならこう言うよ〜〜〜〜〜!!!からの♪できない...の緩急が好きでした。

 

 

吉沢亮くん(天下の吉沢亮さんなのでなぜかフルネームで呼んでしまう)は本当に初ミュージカルなんですか?歌う量は多いけど外さないしハモリも安定してるし!台詞回しの自然さもすごい!(マックス「どの立場から言ってんの?」で本当にすみません......)

マックスの♪We can do itとレオの♪なってやるぞプロデューサーのハモリが聴き取りやすくて好きでした。

 

不幸だ

ホーンテッドマンションのグリムグリニムゴーストみたいなハーモニー。♪とってもとってもとってもとっても悲しい〜(なりたいよプロデューサー)のハーモニーが特に。

 

「はいマークスさん」の言い方の違いも面白くて、吉沢亮くんは、結局会計士に戻ってきてしまったよ...しょんぼり...またこの仕事か...しょんぼり...上司の言いなりかあ...しょんぼり...って感じ。

大野くんはちょっと上を見ながら声色も作って「はいマークスさん」。定型文で毎日言ってるんだろうなあ。『ハリー・ポッターと賢者の石』の冒頭でペチュニアおばさんに「早く支度をおし!焦がしたら承知しないよ?」と言われて「はいおばさん」と返すハリーと一緒。

 

ふるさとバイエルン〜グーテンタークピョンピョン

バイエルン”というワードでシシィを思い出してしまいます。

 

フランツって軍鳩に名前をつけて毎日話しかけてとても大切にしてるんだろうに、最後の♪あの〜懐かしき〜バイエルンよ〜!では歌が盛り上がりすぎて鳩をぶんぶん振り回していたのが好きでした笑

 

中盤から吉沢亮くんには「お前今ぼーっとしてたろ!」、大野くんには「お前はキラキラしてるんだよ!キラキラすんな!」って追加のツッコミが入ったのもその通りだな〜〜って笑ってしまいました。

いや!決して吉沢亮くんが板の上でぼーっとしてたわけではないんだけど吉沢亮くんのレオは全体的にぽやっとしてる印象だったので笑

 

ロジャーの邸宅

初日の衝撃

振り切ったな!!!とかやってやったな!!!とか、そういう感情で血が沸き立つのを感じました(?)案の定色んな方の感想を拝見すると、木村達成さん好評じゃないですか?!(自分が応援してる役者さんが褒められてるところを見るの大好きマン)

ここに関してはただの好きなところの羅列です。

元々すんばらしい目力をお持ちのたつなりくんが今まで演じた役柄とは異なった方向に“美”の力を遺憾なく発揮しているので、とても美人で凄みがあってロジャーに健気でかわいくて色気のあるカルメンさんでした。虜にしちゃってすみません(照)(マックス「どの立場から言ってんの?」Season2)(フランツ「Season2まで行くってのはなかなか大変なことだよ」)

 

カルメン役として出演が発表されたときはゲイ役ってどうアプローチしていくんだろう?!って思ったんだけど、たつなりくんが出したカルメン像、すごく好感が持てます。結局たつなりくんの役作りが好きだという話なんですが、“ゲイ”という世間一般で踏襲されてきたステレオタイプに囚われずに、カルメン・ギアという1人の人間を極めていった。その人の個性として勝負していった感じがして、たつなりくんって真面目だなあと思いました。

エストロ塩田明弘さんの番組でも「たっちゃんは“こう見えて”真面目だからね」と繰り返し言われていましたが、いつも真摯だなと思います。

 

「こう見えて」っていうのも肝だと思うんです。

たつなりくんのオタクがよく言う「心のルート」が登場したのはこちらのインタビュー↓

 

WOWOWの『僕らのミュージカル・ソング』で「はるかちゃんと美の暴力で戦っていくんで」と言っていましたが、女性的な仕草やヒールでの歩き方を研究したり、元から本番始まるとカリッカリに痩せていく体質なのに『銀河鉄道の夜』のジョバンニとカルメンのために小麦を抜いてダイエットしたり。そういうとこが好き!

 

「トイレの行き方もまともに教えられないよ」の後、「(モデルのようにドアの縁に手をかけながら階段を降りてくる)(十分な間).........(ツカツカツカ)......ロジャーです!」のたつなりくんスタイル良すぎない?!?!

あの横移動ステップは誰がどうやって考案したの?

そしてロジャー邸のドアチャイムってウエストサイドストーリーなんですね。WSS3が公演中止になってしまいウエストサイドストーリーに人生で触れたことがないオタクです。可知さんの動画のおかげでいつでも聞ける!うれしい!

youtu.be

 

part1はこちら

youtu.be

 

オネエで

  • ロジャーの「貪ったわ!」がまじで爆食いしてそうな言い方で草
  • ロジャーが「無理よ、やらないわ」と言うたびに「あら...やればいいのに...」って顔をするけどロジャーの意志を尊重して様子を伺うカルメンさん愛
  • 「ダジャレで失礼!」\パンパンパンパン/につっこむ吉沢亮くんレオの「どこがどうダジャレ?」が冷静で好きでした笑
  • ロジャー「♪例えて言えば」レオ「...オネエっぽく?」\チャーン/に合わせて超ウルトラグレートデリシャス大車輪山嵐級にかわいいカルメンさんのウインク☆
  • ロジャーにウィッグを合わせてあげるカルメンさん、プロの女の顔
  • 鏡の縁なぞるカルメンさんの色気
  • ♪トーニートニートニートニートーニーのカルメンさんの足の美しさ!たつなりくん足なが!パンツの切れ目が美脚を引き立たせてる!細い!
  • ドレスの裾を捲し上げながらの♪ターンターンキックターンターンターンキックターンワンツースリーキックターンがツボでした笑
  • ↑このときのカルメンさんめちゃくちゃ楽しそうに手拍子しててかわいい
  • ファルセットがどんどんノリノリに!最初の頃は「これ誰が歌ってるのかな?ん〜カルメンかな?」っていうファルセットだったのが後半になるにつれて「お〜今日もカルメンさんやってるな〜!」ってくらいの存在感出してました。
  • ファルセットでハモるのって難しくない?できるのすごくない?下から段々重ねていくところ。
  • ♪ピチピチのパンツで チームロジャーの横に一緒に整列して敬礼するカルメンさんかわいい!腰の角度も表情も顔の上げ具合も!唇尖らせててかわいい!カルメンさんかわいすぎランキングTOP3に入ります!
  • ♪見 え る わのメモ帳とペンの持ち方!指が綺麗!
  • ♪やーるーわーーーの前「これは大きな決断よ」のとき、足の痙攣をさすさす押さえるカルメンさん献身的
  • 後半「発作を起こしているのよ!......天才的閃きの!」が誇らしげでよかった!
  • ♪ロジャーデブリーのじーだーいよーの声かっこいい!もちろんその前の♪笑いたくて〜とか♪やっちゃえーばーもいい声なんだけど、♪ロジャーデブリーの〜はこれまでの舞台で培ってきました!!カルメン役の木村達成くんは実はこんなに歌が上手いんです!!って気持ちになる。
  • スコット登場のときにルーペでどこガン見してるのカルメンさん笑
  • ロジャー「そして...これはどうでもいいけど......照明係のシャーリー・マルコビッツ」(カルメンがマックスに指パッチン)ここのマックスへのアイコンタクト好き!!
  • 「そして!」(デデデデデンデン)「コンガ!」「アアーーーーー!!(ファルセット)」の一連の表情、極まってるなあ!!「そして!」の首の動きかっこいい!

 

実は個人的に1番好きなギャグがありまして(笑)

♪見えるわ(輪)アーン♡(ロジャーが両手で丸を作ってる)

これの“輪”の圧力。最初観たときは全然気づかなかったんだけど、5回目くらいから「わ」って……「輪」?!くっそくだらなくて笑える。こんなことで笑ってしまって悔しい!

 

見せびらかすのよ

  • これの前のマックス「何人(なんぴと)たりとも我々を〜」レオ「何人(なんぴと)たりともだね!マックス!」が真田「何人(なんぴと)も神の子のテニスから逃げることはできない」で再生されて頭の中で幸村のテニスが始まってしまう。
  • はるかちゃん優勝
  • 「この辺を片付けてほしいんだけど」「カタヅケ?...カタヅケ変な言葉笑 カタヅケナニィ?」「さっき下ネタわかってたよね?!」「下ネタ〜!」「下ネタわかってて片付け知らないの?!」「ナニィ?」←この最後のナニィ?のテンポ感!笑 どんどん面白くなってた笑
  • 大野くんのレオはシャキッとしてるところはシャキッとしてるけど恋のせいで溶けちゃってる、デレデレ。ウーラのことがめっちゃ好きなの伝わってくる。
  • 「そしてウーラのダンス!」(コンコンコンコン)の指のキレ!
  • 「ウーラさっき踊ったでしょ?ウーラまた踊る!」肩ふるふるかわいい
  • 「ウーラがっつり歌う!...♪見ーせてーーー!!!!」最強かよ!!

 

ビアリが来るまで

マックスは「未来はなかった俺が来るまで」でおばあさまたちは「未来はなかった彼が来るまで」。

同じメロディの歌詞違いだけど、自分たちで未来はないって言うのと他人から未来はないって言われるのでは違うよな笑 マックスひどい笑

神谷玲花さんのおばあちゃんが好きです。

 

ここマックス本人は至極真面目に歌ってるけど歌詞は最悪だしすっごく馬鹿馬鹿しいのに仰々しいメロディと伴奏なのがユーモアなんだろうな笑

第一声の♪時は〜がトートかな?っていう声の響かせ方と貫禄でそれさえも面白い。

カルメン』のハバネラの伴奏の基本形が用いられているのも面白いですよね。カルメンは男たちを誘惑するけどマックスはおばあさまたちを誘惑して資金を手に入れる。

 

 

それぞれの登場人物にモチーフの音楽があって重なっていくのが好きです。後の“裏切り者”の「最初は何だっけ?」にも効いてくる。

1幕終わりに登場人物が全員集合して歌い上げるのが嫌いなオタクはいない。

公演終盤♪あーあーあーあーあーあーあーああーの前にカルメンさんが指を小指から折っていって来い来いして誘惑し始めたのやばかった!

 

時系列的にロジャー・カルメンとフランツはここで初対面なのかな?ロジャーが鳩と戯れてるところもあったりしてすでに仲良さそう。

実際この後Break a legをやる仲になりますからね。

(ふるたかずき「勇気VS意地をやる仲になりました」)

 

 

 

あの顔!

まずウーラのドレスがかわいいの。青いのかわいい。

みなさんはどのはるかちゃんが好きでしたか?

私はこの青いドレスに白エプロンが好きです。色合いもかわいいしよく見ると透け感があるのも好き。あとリオから帰ってきたときの緑の南国ワンピースも好き。ウエストの切り替えがかわいい。

 

レオとウーラのダンスはcheek to cheekみたい。はるかちゃんのステップのお上品さと腕のしなやかさが好き。浅田真央ちゃんのステップで軸足を変えない方が難易度高いって聞いたことあるんだけど、ウーラのダンスも軸足変えないところがあってときめいた!

 

机から降りるときに大野くんだとリフトだけど吉沢亮くんだと手を差し伸べて自力降りなんだね。

 

シャンドンとクリスティーヌだとシャンドンがリードだったけど男性をリードしてしまうはるかちゃんもめっちゃいい!!!ファントムのとき、たつなりくんは稽古場に来てまず抱き合って踊れって言われてたらしいので、はるかちゃんたつなりくんともう一度踊って!

 

初日にそれ言っちゃダメ

  • かわいさと歌のうまさが渋滞してる。フランツソロのとき、ロジャーの肩に手を置いてぴょこぴょこしてるカルメンさんかわいい。
  • ♪ミラノのスカラ座では〜かなーらーずー言うわ〜狼に食べられろと 大野くんには当たりが強い日が多かったけど最終週は吉沢亮くんにもガツガツいってた。
  • ♪絶対絶対絶対絶対絶対絶対言っちゃだめ ここの指!!!!顔の角度!!!そして何よりも楽しそうなカルメンさん!!
  •  カルメン「トイトイトイ」図太くて最高
  • 「〜おかまクイーンでも!〜ブロードウェイスターよ!」のときちょっと上向くからリップのテカテカしてて、どこのグロスですか?って思ってた。
  • 「そう!足を折れ!」かわいい

 

ヒトラーの春

  • 吉野さんオンステージ
  • 最初の銀衣装のはるかちゃん輝いてる。発光してる。初日「総統が来るわ!」まではるかちゃんって気づかなくて、最後に出てきた人発光してるなあ〜って思ってたらはるかちゃんさん様でした。
  • 最初壇上にいて途中降りてきて♪総統に〜みんな大興奮〜って歌い出す赤い帽子のアンサンブルさんたち、BBBのFour Brothers
  • ♪イケてるナチたち〜のステップどうなってるの?!
  • 車いすフランクリン・ルーズベルトが出てくるところの音楽とロジャーの動きがトーキー映画のミッキー。そういえばミッキーのモデルはチャップリンって言われてますね。
  • ♪みーんーなでー行くぞー裏のドラムが細かくてめっちゃ動いててかっこいい
  • 人形の兵士たちが現れたところのリズムがボレロ
  • ♪バトルよ バトルよ ヒットラーのタップダンスバトルよのウーラの衣装かわいい

 

♪どんな昔の政治家たちでも忘れちゃいけない全てショービズよからはミュージカルとして1番ゾクゾクするところかもしれない。

滑稽でもそれを黙らせるミュージカルの力

本来ゲイの人がキレッキレで歌い踊ってるのが面白ポイントなのかもしれないけど、吉野さんのロジャーってとにかくかっこいいなあって。馬鹿馬鹿しくてくだらなくて下品で失礼なショーの内容ってわかっていても、全てを圧倒して黙らせてしまうミュージカルのパワーを感じる。

♪はーるーがーーーーきーーーたーーーーーーのロングトーン痺れるなあ。ロジャーの一生懸命さと吉野さんの熱量がリンクして、観ている人の心を動かしてる。

 

 

裏切者

井上芳雄さんすごい

いつだったか開演前のロビーで私の後ろにいた初ミュージカル観劇らしい吉沢亮くんのファンの方が、「初ミュージカルがプロデューサーズってすごいし、一緒に出てる人はミュージカルで1番有名な人なんだよ!」と豪語されていたのですが、「一緒に出てる人」=井上芳雄さん、それすなわち「ミュージカルで1番有名な人」!うん、間違いない!笑

きっとあの方々はこの曲の芳雄さんを見て、さらにミュージカルってすごいって思ったんじゃないでしょうか。ミュージカルのレジェンドの匠の技を凝縮して緻密で強力な大砲をぶっぱなし続けるような約5分間。

 

 

彼が

  • 突然ですが芳雄さんの歌い出しのブレス合図が好き。エリザでも好きだった。
  • 展開と曲調がラカージュでジャンミッシェルとジョルジュが歌う“見てごらん”みたい
  • タイプライター可知さん 喋ってないのになんでそんなに面白いの?そんなの記録する?ってところまで記録してる。「豚(カチャ)豚(カチャ)豚豚(カチャカチャ)って言ってごめん(カチャカチャカチャカチャカチャ)」
  • コーラス隊のおばあさまたちがアトラクションで歌うオーディオアニマトロニクスみがある。

 

愛の虜

  • 刑務所から出られるってお知らせがくるときのトランペットミュートが古き良きアメリカって感じがして好き
  • 囚人衣装のアンサンブルさんたちが退場するときのハープ好き
  • カルメン大ジャンプのときの音楽がドラマチックで情熱的
  • シンシン刑務者の凶悪な囚人たちを締めてるマックス強すぎん?マックスって周りのキャラ濃い奴らに振り回されてるように見えて全てを締めてるよね。個性が強い人が寄ってくるのも納得。
  • 最後の♪ランランランランがシーのクリスマス・ウィッシュ2010と2011?
  • 「頼れるレオとマックス」歌詞も良き
  • ラスト、オレンジバックの2人のシルエットで終わるのすごく好き。涙出る。幸せになって......。
  • ステッキでネオンサインを指すときのゆるさがいい。
  • マックスからプロデューサーの帽子を受け取って微笑んで被るまで言葉を交わさないのめちゃくちゃよくない?「全部教えないとわからないのか?舞台にはプロデューサーの恋人用の役ってのがあるんだよ!」って言われたり平気でグッドラックって言ったりしてたレオが...。もはや2人に言葉はいらないのです...。なぜって友達だから...。

 

カテコ

来てくれてありがとう

お別れは辛いけど

出口へ向かいましょう

これ以上何もないから

広めてよ いい噂

嫌いなら何も言うな

でもこれは言わせて

adios! au brevoir! wiedersehen! ta-ta-ta! Good-bye!

出て行け!

 

サービスナンバー大好き!あんなおまけがついてくるなんて! 

何あのたつなりさん!!指ツンツンかわいすぎ!“出て行け!”の手ひらひらで無事に追い払われました!

“嫌いなら何も言うな”の後くるっと回るところも好き。

贅沢は言わないからここだけでも東宝YouTubeチャンネルに載せてくださいお願いします。

 

 

ということで、来週ある『木村達成祭』(という名のFCイベ)でプロデューサーズのもっとディープなところが聞けるんじゃないかと楽しみにしています!3日間あるうちの12/13(日)17:00〜の回はFC会員じゃなくても2500円で見れるみたいなので気になった方はぜひ!(「どの立場から言ってんの?」Season3)

 

 

 

音楽劇「銀河鉄道の夜2020」を観た話

千秋楽が終わってもう抜け殻です。

応援している方の初主演舞台で力いっぱい拍手を贈れたことに胸がいっぱいで、とにかく応援してきてよかった、続けてきてよかった、ここまで来なければ見られなかった景色を見せてもらった、そんな気持ちです。劇場から出ても涙が止まらなくて泣いて道を歩く変な人でした。

 

 

勉強不足なので見当違いなことをたくさん言ってると思います。自分がメモしたことを後で思い返す用にまとめただけのものなので色々目をつぶってくださるとありがたいです。

 

「ちょっと上へ登ってみたくなってね」なたつなりくん

まず思ったことは、やっぱりたつなりくんのお芝居が好き!!

今まではどんなに舞台上に人がいても目を惹いてしまう圧倒的な存在感に魅力を感じていたのだけど、今回のジョバンニはひと味違くて、何と言えばいいのか突出しない

朗読や配信の作品もあったけど銀河鉄道の夜はたつなりくんの初主演で、初座長で、主人公で1番出番が多くて......。なのに馴染んでる。

これってハイキュー‼︎の影山くんで言うところの「目立たない良いプレー」なのかなと思いまして。「攻撃が淡々と決まって見えるのはセットされた球が混じり気なく『良いセッティング』だからだ。打つ奴も観てる奴も何も違和感が無いっていうこと。」のアレです。

たつなりくんのジョバンニ、佇まいにすごく説得力がある。ギラギラと強い光を放っているわけじゃないんだけど当たり前にそこにいる。

はあ〜〜〜すごい。なんか「ちょっと上へ登ってみたくなってね」状態。関東氷帝乾貞治か。

 

かと思いきや強烈なサーブも打ち込んでくる。

例えば「こぼれたものは何でしょう」。たつなりくんの真骨頂ですよね。ほんとすき。あと「ザネリなんか毒虫だ!」とか「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうねえ」とか。一気に空気をひっくり返してお芝居に引き込んでくる。

 

牛乳瓶の話

孤独なジョバンニ

牛乳瓶に天の川が入っています

乱暴者の箒星がやってきて

牛乳瓶を倒しました

かぷかぷ かぷかぷかぷ

こぼれたものは何でしょう

 

ここ大好きなシーンです。年老いた女の人の「いま誰もいないのでわかりません」からもう好き。

原作を読んでいたときは何気ないシーンだと思って読み飛ばしていたのですが、音楽劇だと結構肉付けされていました。

この後ジョバンニが銀河鉄道に乗る前に台詞のフラッシュバックがあって、無意識のうちにジョバンニを追い詰めてしまった言葉が並びますが、それの最後が「ではもう少したってから来てください」なんだよね。ジョバンニが折れる最終的な決定打はザネリと周りの子たちの「いーけないんだいけないんだ らーっことっちゃいけないんだ」だと思うんだけど、ジョバンニは年老いた女の人の言葉がかなりグサグサと心に刺さったんじゃないかと推測してしまうのですが、

ここでアメユキみたいに「ジョバンニィ〜」と声をかけたくなるポイント。

自分のとこに牛乳の配達がなかった上にあんなに散々な物言いまでされたのに、「では、ありがとう」で帰るって!もっと言い返せばいいじゃん!とつい思ってしまうんだけど......。

最初はジョバンニが優しい子だからだと思っていたけど、本当は言い返せないんだよね。

学校にいるときもそう。もう少し言い返したらいいじゃない、「やめろ」って言えばいいじゃない。

活版所であんなに目を輝かせてタイタニックに夢を見ていたなら「タイタニックって聞いたことあるか?」って言われてお前たちが知るより先に知ってたって言い返せばいいのに!

大学士に「おや、君の友達は?」と聞かれて咄嗟に「すみません」って普通子どもがするやりとりじゃないよね?!

ジョバンニは「やめて」が言えない子か......。これは壊れていくよ。妙に大人びてるのが逆に悲しい......。

 

というか原作の「では、ありがとう」ってもっと素っ気なく言ってると思ってたの!でもたつなりくんの「では、ありがとう」ってとっても優しい!もう嘘でしょ......。それと2幕で牛乳をもらっての「すみません」「いいえ」も同様に。こういうところがたつなりくんがジョバンニを演る意味なんだなあ。好き。

 

牛乳屋の場面だけじゃなくて、学校でも活版所でも家でもこの子は周りに気遣ってるなあって思う。活版所でも1番下っ端だろうし「すみません」とよく謝ってる。本当ならばザネリや取り囲みの子たちのように遊んでお祭りに行って学校という狭い社会の中で生きていていいはずの年齢なのに世間を知っている感がある。それがジョバンニの孤独に繋がってるのかなあなんて思いました。

原作を読んだだけではここまで考えなかった。

 

牛乳瓶が満たされる

そして銀河鉄道の旅から帰ってきて再び牛乳屋さんに行くシーン。今度はすぐに男の人が出てきて「すみませんでした」と謝られながら満タンの牛乳瓶を受け取る。

ここのたつなりくんジョバンニの表情、微笑みを浮かべて満足げに牛乳瓶を見つめるのが1幕と対比されていていいなあ。

 

「こぼれたものは何でしょう」ってジョバンニの心のダムが決壊する感じ。ジョバンニは優しくて穏やかで母親思いのいい子だなって思うんだけど、じわじわと周りからの負荷に耐えきれなってついに「毒虫だ!ザネリなんか毒虫だ!ザネリなんか溺れちまえ!舟なんか沈んじまえ!」の叫びになる。これが皮肉なことに現実になってしまうのが本当にやりきれないところ......。

 

しかしこの牛乳瓶の会話が決壊のトリガーになるのが意外だったんですが、原作を読み返したら年老いた女の人は「赤い眼」をしているんですね。宮沢賢治における「赤い眼」は悲劇性、不吉なことが起きると予兆させるものという説があるのでなるほどね!と納得。

赤に関して印象的なのがタイタニックの発破のシーン。客席に向かって赤い閃光が走る。この後“赤い目玉の蠍”って星めぐりの歌が入る演出秀逸すぎませんか?!

 

夜の帳が下りる、オープニング

物語の最初、アメユキが歩いてくる場面。最初は森なのかな。そこでアメユキが腕を広げるとトレモロの厚みが次第に増して、音を放つと一気に夜の帳が下りて銀河の世界になる。

これが見事で好きです。

 

プリオシン海岸のオリジナル台詞を文字に起こしたい

ここの場面は舞台オリジナルの台詞が多いですね。しかもカムパネルラの“ほんとうにいいこと”への葛藤や生きている証明に繋がる大事な台詞なので全部文字に起こしたい!

カムパネルラの「確かにあったのに、確かに生きていたのに!なくなってしまうんですか?!」なんて芯をつきまくってるし。

 

銀河鉄道でジョバンニとカムパネルラが出会ったときのジョバンニなんてまさに「目立たない良いプレー」だと思うんですよ。カムパネルラとの距離感を測ってる感じ。「ザネリはもう帰ったよ」のとき、カムパネルラには分かっていて自分には分からないことがあると分かりながらカムパネルラのそばに寄り添う。
こういうところがたつなりくんすごく丁寧。ジョバンニルートで起きていない事象についても丁寧に関与して、だからその場にいるし役が生きてる。

 

明滅する苹果

1幕の最後、苹果が宙に登ってジョバンニとカンパネルラが交互に「光った」「消えた」を繰り返す場面。あれは“春と修羅”で言う「明滅」のメタファーなのかなと思いました。

音楽劇「銀河鉄道の夜2020」で“春と修羅”が用いられて印象的だった場面が2つあって、1つ目は1幕ラストに赤い苹果が宙に登っていく場面。2つ目は2幕ラストにカンパネルラが死んでザネリが毛布に包まっている場面。

どちらもケンジの「ひかりはたもちその電燈は失はれ」で途切れるんだけど、前者と後者で続きが違う。

前者でカンパネルラは絶望したように慟哭する。電燈(命)が失われる=「死んだらカムパネルラが生きていた証はなくなる」ことに絶望しているのかな。

これは「おっかさんは僕をゆるしてくださるだろうか」から始まる“ほんとうの幸い”に繋がっていて、「ほんとうにいいことをしたらおっかさんは許してくれると思う」とカンパネルラは言うものの、この時点で自分が死んでザネリを助けたことがほんとうにいいことなのかは自信がないようだった。だから「その電燈は失はれ」でカンパネルラは死によって自分が生きた証がなくなってしまうことを恐れたのではないか。

対して後者ではジョバンニが笑う。これは死を超えてなおカンパネルラが生きた証は残るとジョバンニが確信したからではないか。「僕たちどこまでも一緒に行こう」って普通だと場所の共有だけど、第四次空間的に言うと違う場所にいても時間を共にするような印象を受ける。残された者の務めは心に残すこと。「その電燈は失はれ」ても残された者の心から消えることはない。だから“明滅”なのだと思う。完全に消えるのではなく「光った」「消えた」になる。

 

切符の話

その前に活版所で登場する記事の見出しは

アインシュタイン特殊相対性理論を発見

・ミンコフスキーが四次元空間の概念を発表

・豪華客船タイタニック号出航

で、タイタニックがこの後ピックアップされるのは言わずもがななんですが、あの素晴らしい脚本演出で!最初に出しておいた言葉を意味のないものにするはずがない!と思い注目すると出てきました、「第四次」が。

鳥捕りがジョバンニの切符を見て「こいつをお持ちになれぁ、なるほど、こんな不完全な幻想第四次の銀河鉄道なんか、どこまででも行ける筈でさあ、あなた方大したもんですね」と言ってる!

これ奇妙なことがあって、銀河鉄道に乗ってる人は何らかの理由ですでに亡くなった人たちということを前提にすると、今朝の新聞に見出しがつく「第四次」という言葉がこの世界の先の住人らしき鳥捕りの口から出てくるという矛盾です。この型にはまらない感じが鳥捕りらしいし、地球温暖化や日本の農業の衰退を予測していた宮沢賢治が書いた物語だと思うと何の違和感もないというか笑

 

ところで鳥捕りの切符は小さい紙切れですぐ近くの観測所のあたりで降りないといけないのに対し、カムパネルラのは鼠いろ、ジョバンニに至ってはもっと大きな緑色の切符。ジョバンニの切符はどこまでも行けると言われます。切符の大きさはどこまでいけるかに関係しているのかなと思いました。

 

“新世界交響楽”と“そらや愛やりんごや風”

どうしようもなく泣けてくるシーン。

苹果ってキリスト色が強いし宮沢賢治の“いい匂い”は宗教的だという説もありますから、“そらや愛やりんごや風”の歌はパイプオルガンの音が鳴っているのも相まって賛美歌のようで、タイタニックでギュッとなった心を安らげてくれるようでした。

 

「けれどもカムパネルラなんかあんまりひどい」「ああ本当にどこまでもどこまでも僕と一緒に行く人はいないんだろうか」の後、たつなりくんの“目立たない良いプレー”が炸裂しますよね!

俯いてしまったジョバンニを見遣って苹果を差し出す少女。毎回微妙に違うお芝居になっていましたが、一度は目を背けて受け取るのを拒否するものの、「ほら」と優しく促されて両手で包み込み、それでも受け取れないよと切ない表情で「ありがとう」と言ってそっと少女に返す。

ん〜〜好きでしかない。ここの一連の流れずっと見ていたい。

 

そしてわたり鳥が飛んで、「行くところかしら、帰るところかしら」「きっと故郷へ帰るんだ」「この汽車は?行くところ?帰るところ?」「帰るところでしょうなあ、故郷へ」とありますが、原作だと「新世界交響楽」が流れていると書いてあるのではっとしました。2楽章の“家路”ですね!しかもWikipediaを見たら歌詞の“home”にはキリスト教的な、死後に救済された魂が赴く場所としての「天上の故郷」という意味も重ねられているとあって、なるほど!

 

僕たちどこまでも一緒に行こう

これはサーブの方です。たつなりくんの真骨頂。それでいて心のルートを緻密に辿っているので総じて最高。

カムパネルラが野原におっかさんを見つけて2人が別れる最後の「カムパネルラ、僕たち一緒に行こうね」って後ろにいるカムパネルラに意識がありながらもジョバンニは目の前の光景から目が離せない。これがたつなりくんものっっすごくうまい!

 

今夜は特別輝いてますね

ジョバンニのお父さんがまもなく帰ってくると伝えた後夜空を見上げながら「今夜は特別輝いてますね」と言い残して去っていく。

ここで汽笛の音が入るのが、お父さんもカムパネルラが銀河を旅して今も夜空にいると分かっているようでとても泣けてくる。もしかしてジョバンニとカムパネルラの間に起きた夢のような本当の旅を知っていたりして。

 

「証明してくれるかい?」「うん!」

木村達成さんって役者さんすごくない?

「僕たちどこまでも一緒に行こう」からこっちは泣いてんのよ。そこから怒涛の芝居が続くよね。“手足”が始まったところからもうすごいのよ。

 

だいじょうぶだいじょうぶだいじょうぶだいじょうぶ......

胸に手を当てて目を伏せるだけでこんなに心を掴んでくる役者がいるか??1個ずつ心に浸透していってる。

 

ジョバンニが生きていく世界

千秋楽で特に感じたんだけど、“手足”のときジョバンニはずっと天上のカムパネルラと会話してるなと思った。でも同時に周りにいる学校の人たちやおっかさんや活版所の人のことも見渡してる。

ジョバンニが生きていく世界はここなんだよ。今までと同じ人たち。でも明日からは少し違うかもしれない人たち。千秋楽にしてグッときちゃった。

 

「うん」

「うん」でこれだけ泣かせる役者がいるか?!千秋楽が今まで見たことないやつで最後の最後にまたやられたーー!!ってなりました。

ラストのジョバンニの表情を見ると「未来」って言葉が思い浮かぶ。「大丈夫だよ」とも聞こえる。霊廟のベンヴォーリオを見るのと似た感覚になるのは両者とも残された者だからかな。

 

 

最初の数回は素晴らしい物語や演出、音楽に目がいってしまって、役者さんの芝居の妙に注目し出したのが実はラスト数回だったということに千秋楽まで気づかないほど作品にのめり込んだ3週間でした。濃度の高い時間を過ごさせてもらいました。

知れば知るほど答えが遠くに行ってしまうような感覚で、もっと観ていたかったです。

いつも素敵な世界に連れて行ってくれるたつなりくんありがとうございました。本当にお疲れ様でした。

 

 

 

 

『CALL』を観た話

TOHO MUSICAL LAB.のCALLを観ました。

 

劇場から離れて数か月、舞台作品の配信は何本か観ましたが、新作の配信を観るのは今回が初めてでした。しかもCALLはオリジナルストーリー。

なんか、生で観るのと違うのは当たり前だけど、過去作の配信ともまた違かった!舞台の初日みたいなTLの空気感で幸せだったなあ。みんなの新鮮な感想が溢れ出す感じ!

 

 

たつなりくんが出演したCALLも、Happily Ever Afterもどっちもよかった!見るたびに成長に驚かされる木村達成は配信でも健在でした!


 

 

 

応援しているたつなりくんを中心に、ここがよかった!というところをざっくばらんに書いていきたいと思います。(本当は全ての台詞回しの好きポイントを言っていきたいところだけど)

 

もしできたら、私の声の反響を澄んだ空気で包み込んで、どこか遠くまで運んでくれない?そして誰かに届けてくれない?

ミナモはお姉ちゃんたちよりも世間離れしているところがあって、静寂に向けて歌ってはいても、自分の声が誰かに届くということに小さな憧れを持っている。

このミナモの美しい言葉をぐっと近くに感じ想像力をかき立てられるのは無観客の作品ならではだと思いました。人が入っていない劇場の響きだからこその説得力なんじゃないかな?ミナモが音遊びをするかのようにステージを飛び跳ねる姿は空気に音を刻むようでした。

 

どのくらいのタイムラグで、あなたまで届く?

劇場にいたらタイムラグなんて考えることなかったかもしれない。同じ空間で同じときを、同じ熱量を共有できるのが劇場なんだな。

 

ごめん、素敵な歌だったからつい拍手しちゃって!

ミナモに「何してるの?」と聞かれて答えるヒダリメ。話し始めたヒダリメにプイと背を向けてマイクに歩き出したミナモを追いかけるように「つい拍手しちゃって!」が前のめりになるのが好きでした。

ヒダリメは遠慮がちに話す控えめな子かと思いきや自分の想いを相手に伝えるということに真摯な人なんだなあ。かつての劇場の様子をミナモに話して聞かせる姿は想いがほとばしっていました。

 

感謝を、伝え...たくて...

拍手を知らないミナモに「いい歌だとどうして拍手するの?」と聞かれ少し考えてこう答えたヒダリメ。

 

これが後から効いてくるんですよね。

オドリバがかもめの衣装に着替えてひとり歌うのを聴いて、思わず立ち上がってパンパンパパンパパンと拍手するミナモから一拍遅れて拍手を送るヒダリメ。

ここの表情がすごくいい!!

オドリバの歌に聞き惚れていたところからミナモの拍手の音で我に返り、慌てて拍手を送るという心の機微が繊細に伝わってきます。

オーボエ奏者の茂木大輔さんが「いい演奏の拍手は遅れてやってくる」とおっしゃっていたのを思い出しました。(余韻に浸っているので)

 

 

ミナモという名前

※すごく個人的な解釈

私はミナモ(=水面)と聞くと、波一つ立っていない鏡のような情景が浮かびます。

しかしそこに石を投げれば波紋が広がっていく。

ミナモって純粋で素朴で何にも染まっていないイメージなのですが、ヒダリメとの出会いで彼女の世界が広がっていく。純粋ゆえに、新しい知識や考え方が彼女自身によく響いていくことが“ミナモ(=水面)”にぴったりなのではないかなと思いました。

 

いや、惚れてはない

ここで2人は心を許したと思うんだ。砕けたやりとりができる相手だって。

冗談っぽく2人で顔を見合わせてふふっと笑う。

空気が柔らかくなって、心を開いてもいいかな...という仕草で恐る恐る後ろの手すりに寄りかかってみる。

こんな仕草1つで2人の心の距離を表現できるなんてたつなりくんすごい!言葉がないところのお芝居が雄弁だなあ!

 

どうして静寂で歌っているの?

ヒダリメって自分が知らなかった世界にも優しい人なんだなあ。というかこの作品の世界は否定するってことがないよね。自分の常識から外れていても「なるほど、そういう考えもあるのね」って受容してくれる。なんて優しい作品なんだ!

 

観客も知らないの?

言い方を間違えればトゲトゲしく聞こえかねないけど、たつなりくんが言葉に命を吹き込むと、これは純粋な驚きであって、相手を尊重しているのがわかる。

たつなりくんニュアンスを伝えるのが上手だなあ。

 

じゃあヒダリメは私の初めての観客だ!

って言われたときのヒダリメの表情の変化!好き!

最初「何言ってるの...?」って顔をした後にじわじわうれしさがこみ上げてくる。

この作品は何気ない台詞回しに無数のキラキラが散りばめられていると思います。

ずっと劇場専用のドローンとして生きてきたヒダリメ。フジワラさんとミズハシさんの思い出話をする様子を見る限り、ヒダリメは演劇や劇場そのもの、そして劇場に足を運ぶ観客ごと愛していたんじゃないかな。彼らを長い間見つめてきたヒダリメが、愛すべき「観客」と呼ばれたのは初めて。

なんだか心がほくほくとあったかくなります。

 

わからないな俺には。......俺は、この場所のことしか知らないから。

フジワラさんとミズハシさんを案じているのに劇場で起きていることしか知り得ないヒダリメの孤独。遠い目をしているのも切ない。良い意味でも悪い意味でも劇場がヒダリメの世界の全てなんだね。

 

♪君の名前呼ぶんだ

ミナモ:1000年前の名残たちも踊り始めたくなるよ

ミナモパートが1000年前

名残たち=ヒダリメ、かつて賑わっていた劇場、フジワラさんミズハシさんを始めとする観客たち?

ヒダリメ:1000年先のもしもたちも踊り始めたくなるよ

ヒダリメパートが1000年先

なのめちゃくちゃいい。

もしも=めいめいのこのツイートが全てだと思います。

 

時代や人は変化していくけれど、劇場という場所は変わらずそこにある。

ヒダリメが見つめてきた劇場がまた人で溢れますように。私たちが劇場で観劇できる日が訪れますように。舞台上に拍手を送れますように。

 

これから起こり得る可能性たちを“もしも”と表現する言葉選びの柔らかさ!

 

今を生きるミナモが過去を思い、過去を知るヒダリメが未来を歌う。

そして最後は全員のユニゾン

刻々流れるこの地点で今まさに踊り出すよ

過去と未来を繋いでいるのは今。ヒダリメとミナモたちが出会った今このときが過去と未来の中間地点。

 

そして“刻々流れる”の「こくこく」って響きがとてもかわいい。たつなりくんが歌うと100倍かわいい。

 

 

おねいちゃんいたの?(羽海野チカ先生風に)

小声。こしょこしょと。かわいい!

たつなりくん立派な26歳男児だけど時々バブみが出る。

 

 

 

 

カーテンコールの説明をするときの拍手がすてき!

背筋をピンと伸ばして手を少し前に出して。顎をちょっと上げて。

私はミュージカルに出るようになってからのたつなりくんのカテコのお辞儀や拍手が大好きで...。仕草に育ちがいい!!って思うのはもちろん、気持ち届けてるなあ!って伝わってくるのも大好きです。

例えばオケに拍手する姿。オケピにオケがいるときは、大きな身体を屈めて、できるだけオケの近くまで手を伸ばすようにして覗き込む。この拍手が大好きなんです。

かくいう私もスタオベで拍手するときは、腕を身体からちょっと離して胸より少し高くまで手を上げて「たつなりくん誇らしい!今日も最高だった!頑張ったね!今日も最高をありがとう!」という気持ちで拍手しているので、ヒダリメのこのときの拍手にはとても共感します!というか見た瞬間「これこれ!これが観劇の楽しさだよね!」という気持ちになりました。この感動をあなたに届けたい!って思うんだよね。

 

 

オドリバの「いいじゃん」

オドリバが静寂に歌う理由がしっくりきました。

「景色に聴いてほしいって思って歌ってるよ」

 

「景色に私の歌が映えるんじゃなくて、私の歌に景色が映えるの」という台詞は一見すると自分中心の言葉に聞こえてしまいますが、むしろ逆転の発想で。

ミナモの思う「誰かに聴いてほしい」の対象がオドリバにとっては「景色」。だから、ずっと静寂に向けて歌う活動をしてきたお姉ちゃんたちが「カーテンコールを聴きたい」というミナモの考えにすぐさま賛同する柔軟さがあるのか。

 

 

この後鳩サブレの話に逸れていくけど、オドリバの言葉を聞いたミナモがどう思ったか知りたいなあと思いました!

CALLは30分という限られた時間に物語をおさめているので、きっと描かれていないエピソードがまだまだあるんじゃないかな?と予感させますね。

 

例えば、謎に包まれている1番上のお姉ちゃんのシーナ。ストロングゼロの500ml缶とペヤングが似合いすぎるシーナの存在が気にならないわけがない!この妹たちにしてこの姉あり。

そしてヒダリメはどうなるのか。姉妹バンドはこの先も旅を続けるだろうから、また劇場に1人になるのかな。「翼が壊れてるから飛べない」という言葉にどこか悲壮感も漂いますが、どこにも飛んでいけないから、この劇場で孤独になるから悲しいというのはちょっと違う気もして。

ヒダリメはこの劇場をとても愛しているから、ミナモたちとどこか新しい場所に旅立つよりも、劇場が活気に溢れて拍手の音が響き渡る日を待ち望んでいるんじゃないかな。“1000年先のもしもたち”が劇場にやってくるその日のために、ここに居続けることを選ぶんじゃないかな、なんて。

 

 

あー早く劇場に行きたい。

わくわくしながらチケットをバッグに詰めるあの瞬間も、劇場に向かう道のりも、劇場独特の匂いも、毎日のように顔を合わせることになるもぎりのお姉さんも、案内アナウンスをするいつものお兄さんも、終演後にはやる気持ちを抑えてツイッターにレポを書くあの時間も、劇場から出たときの高揚感も。

今は全てが愛おしい。

 

感動したから心の底から拍手する。ステージ上の相手に届けるために拍手する。そんな愛すべき日常が帰ってきますように。

 

 

 

『貴方なら生き残れるわ』を観劇した話

翻訳者で児童文学研究者の松岡亭子は「子どもと本」(2015.2.20、岩波新書)で次のようなことを書いています。

井上ひさし氏は、ニュースで、犯人がつかまったと知ると、ほーっとためいきをつくのは、これでひとつの物語が完結したというためいきであり、人間は何もかも物語にしなければ気のすまない生きものなのだと述べておられます。そして、人がそういう存在であるのは、めいめいが自分という物語を生きており、その物語の先が見えないからだ、と。人が文学に求めているのは、自分という物語の先に少しでも光をあててくれることだ、というのです。

 

 

 

 

2018年に彩の国さいたま芸術劇場で上演された劇団た組さんの『貴方なら生き残れるわ』がYouTubeで期間限定配信されています。

 

最近この本を読んで胸にストンと落ちたことと、『貴方なら生き残れるわ』の配信のタイミングがうまく重なり、あのときにうまく言葉にのせられなかった想いをいま一度言語化するいい機会だと思ったので少し書きたいと思います。

 

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この作品は2回観に行きました。

途中からずっと涙が止まらなくて、涙で役者さんたちの表情がぼやけていたのをよく覚えています。でも、物語の結末がどうしても思い出せなかった。

松坂は東京で仕事を辞めたんだった。

吉住さんは推薦をもらって大学に行ったんだっけ?

沖先生はずっとバスケ部の監督を続けたんだっけ?

みんなの顔やバスケしている姿は思い浮かぶのに、「結局どうなった?」という記憶は飛んでしまっていたんです。

 

結論から言うと、今映像で見返して、それでいいんだと思えました。それでいいんだというのは、彼らがなにを選んでどうなったかは、そんなに気にするところじゃなかったということです。

 

なぜかというと、自分が学生だったときもそうだったから。

やっている最中は結果を求めてあがくけど、あとになって残るのはその過程で、結果は案外どうでもよかったりする。大人になった今だから思えることです。

 

個人練のときいつも座っていた椅子、遅くまで練習したホールの匂い、先輩に低音が綺麗だと褒められたこと、後輩と比べられて悔しかったこと、ソロで緊張して息が吸えずフレーズを切ってブレスしてしまったこと、悔しくて泣いたこと。

自分のことになりますが、小中高と9年間吹奏楽を続けてそんなことばっかり鮮明に覚えていて、高校の最後の大会のあと、自分が何を思ったかがあやふやです。

コンクールで結果を残したことや9年続けたことでどんな学びがあったかよりも、途中にあったあれこれに目がいくのです。

 

バスケの才能がないのがわかっていて、「彼女が欲しいから」とみんなに納得してもらえるような理由をつけて勉強しなくちゃと言う當座さんや、才能があるのに「やりたいことを見つけた」と言って大学に入って1年でバスケを辞めた吉住。その他大勢も。

将来バスケで食っていくために部活をしているんじゃない。試合で負けて引退したら、たぶん、もう二度とバスケはしない。なのに、どうしてバスケをするのか、どうして最後の試合で熱い表情をするのか、どうして負けて悔しいのか。

 

 

 

 

 

松岡亭子は「人は文学に『自分の物語の先』を求める」といいます。しかし、それは裏を返せば、「自分では『自分の物語の先』はわからない」ということ。

 

物語のラスト、松坂は「自分の物語の先」がわからなくなったから体育館に戻ってきたんじゃないでしょうか。どうしようもなくなったときは答えが欲しくなります。正解を知りたくなります。松坂はきっと体育館に答えがあると思った。

 

『貴方なら生き残れるわ』の世界に生きるバスケ部、先生、野球部の人たちはみんな、誰しもが心の奥底に隠している「あのときの私」に寄り添います。学生時代の、言葉にしようのない心の機微をもって描かれているあの人物たちは、紛れもない過去の私だ。

吉住くんに「お前のバスケをするんじゃないのかよ」と詰め寄られて、ままならない自分の不甲斐なさを知りながらもうれしかった沖先生も、あと一歩吹っ切れなくて、吹っ切ってみたら失敗したやまぴーも、ずっと人と比較され将来の不安に押し潰されそうだったけど、吉住に「お前がいろ!」と求められて、脅迫のような肯定に居場所を与えられた當座さんも。

この作品を観て心がグサグサ刺されるのは、彼らが、誰しもの心に巣を食う「あのときの自分」だからではないでしょうか。

 

 

またもう一つ面白いと思ったのが松坂と吉住の扱い方です。

『貴方なら生き残れるわ』のHPで先に公開されていたあらすじを読むと松坂が主人公なのだとわかります。

松坂は母校の体育館にやってきます。
そのコートで、失った熱量を懐かしんでいると先生に会ってしまいます。
先生は言います。元気か。
松坂は言います。まあまあです。
そして松坂はシュートを打ってみなと促されます。
促された松坂はシュートを打ちます。打って、それから、謝ります。
バスケット辞めてごめんなさい。
松坂はバスケットを何も言わずに辞めたのです。
誰も知らないまま、辞めたのです。
ただ、バスケットを辞めたのです。
たかだか、バスケットを辞めたのです。
https://www.google.co.jp/amp/s/amp.amebaownd.com/posts/4395210

実際、物語も松坂が誰もいない体育館にやってきて、沖先生と長尾先生と会話をする場面から始まります。しかし物語が進むにつれて、圧倒的にスポットの当たっている人物に観客は気づく。それが吉住です。

バスケの才能が抜きん出ている吉住を軸にストーリーは進行していき、彼が主人公かのように最後の試合までたどり着く。試合が負け、吉住の嗚咽とともに舞台は冒頭の場面に戻る。

ここで観客はこの物語の主人公が松坂だったと思い出すはずです。

この「主人公の転換」は観客をはっとさせるでしょう。

松坂は自分のことを「本当は普通なだけなんだと思う」と称しますが、そんな松坂を主人公にしたことにこの作品の意味があるとも言えると思います。

 

人生の答えを求めて体育館に帰ってきた松坂と、ここまで2時間弱のあいだ、物語の答えを求めて劇場に集まった観客への答えは、沖先生の次の言葉です。

「今をよかったって思えるようにしていくんだよ」

「選んだものを正解に変えていくしかないんだよ」

 

誰だって「自分の物語の先」はわからない。それは沖先生も同じだけど、松坂より長く生きている沖先生のあり方。

この言葉が好きです。先はわからないから、今を生きよう。漠然とした不安に対面して、どれだけあがいても苦しくても、「あのときこんなことあったよね」と笑えるように。

 

 

 

 

 

普段、舞台は出演される俳優さんで観る作品を決めていて、なかなか彩の国さいたま芸術劇場のような小劇場で観劇することがないのですが、観ることができてよかったと心から思います。素敵な作品に出会わせてくれてありがとうという気持ちでいっぱいです。

 

ミュージカル『ファントム 』を観た話

 

黒い燕尾服とぴかぴかに磨き上げられた革靴。ヒールは生まれながらのスタイルのよさを引き立たせ、カラフルな街灯が並ぶパリの街角で運命の女性の肩を抱き、軽快にステップを踏む。

 

そんな木村達成さんが観られる舞台がミュージカル『ファントム』です。

 

 

“運命の出会い(Who could ever have dreamed up you)”で♪どんな願いでも 叶えてあげよう〜!とクリスティーヌの肩を抱いて空に手を伸ばすシャンドン伯爵が本当に好き!

あそこ毎回心の中で「流れ星〜〜!!」って思っていました笑 たつなりくんが夜空に手をかざすと流れ星が流れますね!!!!

と同時になんてすごい役者さんを応援させていただいているんだろうと感動していました!これからもっともっと舞台上で輝くんだろうなあ〜!!

 

 

今回は応援させていただいている木村達成さんが廣瀬友祐さんとWキャストでシャンドン伯爵を演じたミュージカル『ファントム』について書きたいと思います。

ロミジュリ、エリザベートに続き今年3作目のミュージカルでした。やっぱりミュージカルは楽しい!歌っているたつなりくんも大好きだしたつなりくんの歌声も大好き!今回シャンドン伯爵の見せ場と言えばクリスティーヌと歌い踊る“運命の出会い”でしたが、たつなりくんのオタクが大好きで今でもまた観たいと繰り返す『ラ・カージュ・オ・フォール』の“アンヌと腕を”のハッピー感とこれまたそっくり!!オタク大歓喜でしたね!!また観たいなあ!!

女の子と一緒にいるとかわいさが100万倍になることに定評のあるたつなりくんなので、ちゃぴさんとはるかちゃんどちらの組み合わせでもそれぞれとってもキュートでときめいてしまいました!

そしてエリックは和樹さんと城田さんのWキャスト!Wキャストで観る側の解釈がこんなに変わるんだと驚きました。インタビューやSNSでのやりとり、お二人が登壇した12/8のスペシャルカーテンコールを見て、かつて一騎打ちをした戦友が2019年現在もお互いにリスペクトして切磋琢磨しあえる関係なのが素敵だなあと思いました。

  

 

11/11夜 加藤・木下・木村

11/16昼 城田・木下・木村

11/17夜 城田・木下・木村

11/23昼 加藤・愛希・木村

11/24夜 城田・愛希・木村

11/30夜 城田・愛希・木村

12/07昼 加藤・木下・木村

12/08夜 加藤・愛希・木村

12/14夜 城田・木下・木村

12/15夜 城田・愛希・木村

 

 

 

 

 

 

 

いきなり余談ですが、(※飛ばしてください)このブログを書いているときに高校の現代国語の授業で、物語を一つの文にまとめる学習をしていたのを思い出しました。石原千秋『小説入門のための高校入試国語』(2002、NHK出版)に載っていたものを高校の先生が実践していたんですね。

 

小説入門のための高校入試国語 (NHKブックス)

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  • 作者:石原 千秋
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2002/04/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

フランスの批評家ロラン・バルトの「物語は一つの文である」という立場にならって石原千秋が提唱している方法です。「〜が〜をする物語」(主人公の行動をまとめる)や「〜が、〜になる物語」(主人公の変化をまとめる)といった基本型にならって物語を要約した一文を作ります。

例えば『走れメロス』だったら、「メロスが約束を守る物語」とか「人間不信だった王が、人間を信頼するようになる物語」みたいに。この場合、前者はメロスが主人公、後者は王が主人公の物語として捉えることができます。

物語とは「はじめ」と「終わり」とによって区切られた出来事のことであって、「はじめ」から「終わり」に進むにつれて、主人公がある状態から別のある状態に向かって移動したり(〜をする物語)、変化したりする(〜になる物語)のである。リアリズム小説を基準に考えると内面が明かされるのが主人公であったが、物語を基準に考えると移動したり変化したりする人物に主人公の資格があることになる。その移動や変化を一文にまとめたのが物語文である。(p41)

 

 

 

 

 

余談が長くなりました笑

これを『ファントム』で実践してみたいと思います。

 

 

 

 

 

 

私がミュージカル『ファントム』を一文にまとめるならば、

“怪人”エリックが“人間”エリックに還る物語

 

 

今回の物語をどうしてもラブストーリーだと捉えられなくて。(私ラブストーリーって苦手なのかもしれないって最近気付いたんですけど)

エリックのクリスティーヌへの感情は恋愛感情だったのか?とか、結局のところクリスティーヌはエリックを愛していたのか?とか。考えれば考えるほど泥沼にはまっていく...

 

 

うーんと思いながら東京公演を経て、12/14夜公演で久しぶりに城田さんエリックを見てハッとしました。

そのときのTwitterの下書きです。

 

城田さんエリック

・HOMEで上を見上げて顔を見ようとしたクリスティーヌに「ダメ!」←すごく子どもの言い方

・自分を子どもだと思ってる、地下にいるから時の流れがわからない、どれくらいの年月が過ぎたのか

・でかい図体になったことに気づかず育った

・心と身体のちぐはぐ、でこぼこ

・二面性、心には怪物を飼っている、コントロールできない(怒りで爆発するエネルギー)

・キャリエールとの階段での場面...ただのエリックに戻った。ちぐはぐ、でこぼこが消えた

 

 

そしてこれを書いている今、改めてフライヤーを見返してみたら、なんだ!答え書いてあったじゃないの!

「彼女の歌声は、僕を光の世界へと導くーそれは母の愛のように

哀しくも美しい...人間ファントムの物語。」

 

「人間ファントム」!これだ!私が言いたかったことは!

人間とファントムっていう対極にあるものが共存しているというか、同じ文脈にある!

 

そして、あれは母の愛だよね!母性愛だよね!

(ただ和樹さんのエリックは大人な印象だったので恋愛の意味でも好きだったかな、と思いますので後述します)

 

 

 

 

『人間』から『ファントム』に、『ファントム』が『人間』に還元されていく

 

エリックは怪人なのか

まずタイトルロールの「ファントム」という言葉。作中に「あの人の声って僕の顔より酷いよね?」というジョークめいた台詞もありますが、エリックは化け物として生まれていない。母親は彼の醜さに気づかず、美しいものと疑わずに育てた。そしてずっと地下にいて人目に触れなかったので、その醜さを指摘する人もいなかった。オペラ座の幽霊伝説は少年エリックが夜な夜な泣き叫ぶ声が響き渡って生まれたものなので、顔が醜いからオペラ座の怪人と呼ばれていたわけではないんですよね。

 

 

キャリエールとベラドーヴァの間に生まれたエリック

8歳のとき水に映る自分の姿を見てあまりの醜さに絶望する(←少年エリックの嘆きの泣き声、“化け物”の顔だと認識)

美しいものを求めながら人目につかぬように地下に閉じ籠る日々

クリスティーヌ(探し求めていた美しいもの)との出会い

“君は私の全て”で父と息子の回顧

自ら望んでキャリエールの手で銃殺させられる

クリスティーヌの腕の中で息絶える(クリスティーヌが仮面を取る)

 

 

こう考えてみるとエリックの人生の中で山と谷のような、起伏があるように思えます。イメージとしては数学のグラフの放物線です。

 

エリックはキャリエールとベラドーヴァの間に生まれ、ベラドーヴァの生き写しのようなクリスティーヌによって愛を知り、父親であるキャリエールの手によって命を終わらせられる。そしてクリスティーヌ(≒ベラドーヴァ)の腕の中で息絶える(≒産まれたところに還る)。

 

「クリスティーヌ≒ベラドーヴァ」はクリスティーヌ役のちゃぴさんと晴香ちゃんが兼役されているのでそう解釈しました。

 

ここでベラドーヴァが子守唄として歌っていた“Beautiful Boy”をクリスティーヌが歌うの母胎回帰っぽくないですか?続けて“あなたこそ音楽”をデュエットしたところでエリックの命は尽きます。

 

“君は私のすべて”で心の仮面を剥がす

 「あなたも見る?僕の顔」から始まる父と息子の語らいの場面。

キャリエールが父親だと打ち明ける“君は私のすべて”で私はなぜか居間で寛ぐ親子を連想していました。(イメージとしてはサザエさんのちゃぶ台を囲む夕飯の団欒のシーン笑)

「ねえ、僕が水に映る自分の顔を見た日のこと覚えてる?」「ああ、覚えているとも!」のシーンです。

 

それまでのキャリエールさんはオペラ座の元支配人で、燕尾服をカッチリと着こなす紳士のイメージ。しかしここでは胡座をかくんですね。エリックと肩なんか組んじゃったりして。

ここでエリックはマントを翻す怪人ではなくただの1人の息子になる。さらに言うとファントムという肩書が外されただの人間になる。

キャリエールさんが心の鎧を外すと同時に、エリックも自分を武装していたものから自身を解放したように見えました。

キャリエールさんはエリック自身から水に映る顔を見た日のことを切り出されたので安堵したことでしょうね。だってあの日のことをキャリエールはトラウマレベルでずっと忘れられなかったと思いますから。自分だけが知っていればよかったエリックの顔の醜さを本人に知られたことで、この世に存在する醜さにしてしまったから。

「仮面を与えると少しは気が紛れました。...少なくとも私は」

先程ちぐはぐ、でこぼこが消えたと書きましたが、ここがエリックが人間に戻るポイントの1つだと思います。

 

エリックの最期 

ところでエリックとクリスティーヌが「デュエットしようと思ってデュエットした曲」って意外なことに“あなたこそ音楽”だけなんですよね。“HOME”や“レッスンのはじまり”でもしてるけど、“HOME”はクリスティーヌが相手の存在を認識していないし“レッスンのはじまり”はあくまでレッスンって感じがするから...

つまりエリックにとって「クリスティーヌといえば」っていういわゆる「クリスティーヌの代表曲」って“あなたこそ音楽”だと思うんです。

死ぬ間際に歌われた曲が“Beautiful Boy”から“あなたこそ音楽”になるってなんて素敵な演出!って思いました。ベラドーヴァからクリスティーヌに...。エリックに愛を注ぐ人物が増えたんだなあと思いました。

あそこのシーン、クリスティーヌとベラドーヴァの境界線がぼんやりしている。両方のあいだを揺蕩っているような。でもベラドーヴァの幻影じゃなくて確かにそこに存在しているクリスティーヌという人物がエリックを愛している。

クリスティーヌと出会ってエリックは幸せだった。今までの暗闇の日々に優しい光が差して幸せだったんだ。と言いたい私がいます。

 

 

 

 

曲ごとに印象に残ったこと

とにかく大好きな曲がたくさんあるんです!全部好き!

 

“パリのメロディ”

客席から「♪ラララララン」ってハミングが聴こえてきた時点でクリスティーヌに恋に落ちてしまう!ちゃぴさんも晴香ちゃんもかわいい!

クリスティーヌが持っている茶色いかごから楽譜を取り出しますが、結構サイズがキツキツで1回ちゃぴさんがかごに楽譜ケースを戻せなくてガツッ!えいやっ!と押し込んでいたのでパワータイプのクリスティーヌで笑っちゃいました、そんなところもかわいい。あと11/23昼公演では頑張ったけど入らなくて楽譜ケースを手に持ったまま♪パリはクレイジー!で楽譜飛ばしてましたね笑

 

ここのシャンドン伯爵の紫の衣装も大好きです。

たつなりくんのFCイベでお話がありましたが、デビューのテニミュから体重は維持しているみたいです。でも魔界転生では衣装がお着物だったので似合うようにするためにガンガン食べ少しふっくらした。ロミジュリはそのままいって、エリザベートカリカリになり(痩せたことの表現がカリカリって独特すぎる笑)、観に来たロミジュリカンパニーの皆さまに「たつなり痩せたね~」と言われ、次のファントムではカリッカリになったそうです笑(だから表現笑 本人も「ベーコンみたいにね」なんておどけてましたが笑)

そんなカリッカリ状態で挑んだ紫燕尾服とシルクハット。腰の切り替えが素晴らしく似合ってた!ロミオの古川さんじゃないけどペラッペラでした!腰の位置高い!スタイルよい!

取り巻きの女の子たちを軽くあしらって「仕事仲間でね」なんて言っちゃうあたりプレイボーイ。

「美しいものには目がなくて」って言葉は後にエリックも言っていますから、2人は相反しているようで美しいものを求めているという点でクリスティーヌに惹かれたのは同じなんですよね。本番前のクリスティーヌにプレゼントするのが赤いバラ1本とピンクのバラの花束だという対比も同様に。

このシーンはたつなりくんの手の美しさも際立っていました。名刺を取り出してスラスラとキャリエールへの言伝を書いてクリスティーヌに渡す。この一連の流れで育ちの良さが十分伝わったのではないでしょうか?人差し指と中指で名刺をつかむの好き。あと別れ際クリスティーヌの手を取ってキスするときに必然的に上目遣いになるのもずるかった!なんてずるい男だシャンドン伯爵!

 

少年エリックが兼役で靴磨き屋さんをしていましたが、果物屋さんのお姉さんと手を取って踊っていたのもかわいかったです。

 

“今宵のために”

オペラ座に通う貴族たちと裏方さんたちの掛け合いが楽しい。

華やかなミュージカルナンバーで、東京ディズニーランドで先日公演が終了したワンマンズ・ドリームⅡ-ザ・マジック・リブズ・オンの映画撮影とハリウッドを思い出しながら観ていました。

「♪着飾って夢を見ましょう」で1列に並ぶところのジャン・クロードの仕草がかわいくて見入ってしまいました。「♪着飾って」で服をサッサッサッって払うところと「♪パリ オペラ~」で伸ばすときの足の形が好きです。

 

“世界のどこに”

赤坂の音響正直あまりよくなかったじゃないですか。梅芸に来てから聞き取れるようになったところが多々あって。「♪行けすぐに」も梅芸初日に「ああ、行けすぐにね…!」ってわかった。なんか難しい日本語言ってるから聞き取れなかったんだと思ってました笑

この曲は2幕でエリックがカルロッタを殺しに行く前にもリプライズで歌われますよね。そこにエリックの二面性が表れているなあと思いました。

1幕では「見つけたぼくの夢を 世界のどこにいても手に入れる」の言葉通り、地下に閉じこもっていても美しいものを探し続けるという純粋なエリックの思いの歌のように歌われます。ところが2幕はクリスティーヌを陰謀に陥れようとしたカルロッタへの復讐の歌に変わるわけです。

これ、どちらも同じメロディーラインで歌われているのが面白いと思って。エリックのクリスティーヌへのピュアな愛情と復讐の憎悪の感情が紙一重なことの表れだなあと思いました。

 

“私のもの”

カルロッタオンステージ

すごすぎる!圧倒的パワーを感じる!

カルロッタがディズニーの悪役みたいという感想をよく見ていたのですが私もまさにその通りだと思いました!ただ悪いだけじゃないというか、悪役ポジションにいるのはわかるのにお客さんは愛すべき人物と見てしまう。そんなところがディズニーの悪役「ヴィランズ」との共通点かなと思います。

そもそもウォルト・ディズニーが彼らをヴィランズと名付けたのは「悪役がいるからこそ正義が輝く」という信念があったから。悪役を蔑ろにしてはいけないという愛称として名付けたんですよね。

カルロッタもその信念の通り、まさに愛すべき悪役だと思います。

カルロッタのオペラ座愛が伝わる歌詞があります。

「♪熱く燃えて 夢を掴んで 輝いてこそ私よ」

どうです?テニミュみたいなど根性精神!私自身は体育会系という言葉が大嫌いなんですがこういう青春!汗!涙!みたいなのは大好きです笑

8代目越前リョーマ役のふるたかずきくんの名言「熱しかねえ...」を思い出してしまいます。カルロッタのオペラ座にかける想い、熱しかねえ...

 

“HOME”

曲が始まる前にクリスティーヌが衣装ワゴンを押してくるところからもう素敵。このときの衣装はちゃぴさんはグリーンで晴香ちゃんは水色なんですね。カルロッタはオペラ歌手の素質があるか服装でわかるわ!と言って、クリスティーヌを野良仕事をしている田舎娘と一蹴していましたが、私はこの衣装すごく好きです笑

梅芸に来てから「木管のトリル」でフルートのトリルがちゃんと聴こえるようになってうれしかったです。それからエリックパートでクリスティーヌが誰も見ていないと思ってこっそりシルクハットを被ってふふふってするのかわいかった!

 

“あなたこそ音楽”

オーボエの音色が好きです。

最後の「♪私の(ブレス)人生」で息を揃えるところが好きで、晴香ちゃんとのペアだとエリック主導で音楽を紡いでいる感じがしました。‪和樹さんのエリックは大人な印象だから晴香ちゃんとのペアだと年の差が顕著。側から見ればエリックは才能に惚れ込んで年の離れた恋に落ちたように見えました。晴香ちゃんクリスティーヌはエリックのことを先生として見てる部分が大きいかも‬しれないです。

ちゃぴさんとの組み合わせだと、2人の呼吸がどんぴしゃりと揃う瞬間がわかるんですよね。同じようなことがエリザベートの“私が踊る時”でもあって、ラストの「♪踊る時は 全てこの私が 選ぶ」の合わせるポイントです。私ちゃぴさんの“私が踊る時”大好きなんですよ!花總さんとちゃぴさんでシシィの人生の最高潮が違う気がして、花總さんは“私だけに”のリプライズ。白いドレスで振り向くところから「♪ただ 私の人生は私のもの」で「あなたの言うことは聞くけど私は一筋縄でどうにかなる女じゃないのよ」とフランツを一度拒絶するところが輝かしい。

対してちゃぴさんシシィの最高潮は“私が踊る時”。トートに好きなようにやらせておきながらも絶対にあなたには従わないという挑発するような目つき。今まではトート>シシィのパワーバランスだったのがここではバチバチに戦っていてお互い一歩も引かない。お互いに強い力で押し合っているからこそ倒れない。

ファントムではそれが相手への絶大な信頼感となって出ていた気がします。このタイミングでブレスして歌いだすことに全く迷いがないのがエリックとクリスティーヌの関係性に繋がっていたと思いました。

 

“ビストロ”

はいきましたビストロです。伯爵の出番ですよ!

黒燕尾服白手袋は正義なんで!圧倒的勝利!おめでとうございます!

燕尾服のジャケットの前後で丈が違うのって男性のスタイルをよく見せるためなんだな…とたつなりくんの燕尾姿を見て初めて気づきました。パンツの側章がこれまたスタイルのよさを引き立てていますね。クリスティーヌをエスコートして椅子に座ったときの足の長さ半端ないし、横からのアングルだと革靴のヒールが強調されて最高。

そういえばエスコートするときに「君も歌ってくれる?」が「君も歌うよね?」のゴリ押しバージョンに変わったことも2回ぐらいありました笑 

カルロッタが歌っているときのシャンドンの表情も何気に好きでした。クリスティーヌは純粋だから(歌の良し悪しもあまりわからないのかな?)うんうんって笑顔で聴いてるし、シャンドンに「ひどい歌だね」って耳打ちされたときも「あら、でもこういうところが素晴らしいと思うわ」ぐらいは返していたと思うんですけど、その点シャンドンは伯爵だから教養があって、良いものは良い、悪いものは悪いの尺度があるんですよね。

でもあからさまに悪い顔はできないから、「やれやれ」とか「困った人だなあ…」って表情をしているのがよかったです。

ここの感覚がたつなりくんすごいなあと思って。すっごく個人的なところで申し訳ないんですけど、日本人ならそれさえも隠すというか、肩をすくめることさえできないと思うんです。あからさまに本人に伝えるのはマナー違反だけどちょっと仕草でやってみるみたいなお芝居の感覚が面白かったです。

あとビストロでクリスティーヌの1番熱心なファンはシャンドン伯爵だったので、拍手するタイミングも大体たつなりくんが1番早かった笑 白い手袋を外して準備万端!拍手すれば顔の近くでするからマイクの近くで爆音!めちゃくちゃ笑顔!かわいい!

伝説の拍手フライング回は11/30夜公演でした。

 

そして興奮しすぎてピアノの近くで“パリのメロディ”歌ってるときに普通3回目でピアノにストップかけるのに1回目でストップかけちゃった回もあり、どんだけクリスティーヌ大好きなの、かわいい。

 

“運命の出会い”

かわいいの権化。

街灯からひょっこり顔を出すシャンドン伯爵もかわいかったし、めちゃくちゃぴょんぴょんジャンプするのに声ぶれないで歌うのすごいなあ。

 

以下はたつなりくんのFCイベントでお話していた内容を含みます。

グラス投げは成功したり失敗したりしましたが、稽古場では1回も成功したことがなかったそう。稽古場では高さの関係で本番のセットよりも低い柵だったそうです。小屋入りして本番のセットでやってみたらちゃんと入って、スタッフさんに「たつなりいけるよ!!」とGOサインが出てあのパターンでやることになったみたいです。

正直ずっとオペラグラスでシャンドンさんを定点していたのでグラスが入ったかどうか見る余裕は前方席に入ったときしかなかったのですが笑、投げるときにセットに近寄りすぎたときがあったみたいで、自分でも近すぎる!とわかったのでいつもより投げる軌道を高くしようと頑張ったたつなりくん。放物線を高くしようとしたと言っていました笑 結果真上に投げすぎて柵には入らず!それが自分の頭にたらい落としのように落ちてきそうになったのもギリギリで回避!その後グラスがどうなったかというと、床で跳ね返ったまま袖に入っていき万事休す!ということでした笑

 

ただこの曲でシャンドンとクリスティーヌってお互いに心惹かれあっているようですれ違ってるのが面白かったです。歌詞がだいぶあやふやなのでニュアンスですが、「♪もう一度正直に あの歌は6点か、7点?」「もっと!(かわいい)」「♪ありえない、8点までよ。もっとなら夢のよう!」のところとか、「♪ああ!クリスティーヌこれは恋!」「あのトリル苦手なの!」とか。

掛け合いをしているようで実は自分のことしか話していない笑 ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 全国大会 青学vs立海 前編の“雑魚”の柳さんと赤也ちゃんのようにね。(急に地獄絵図の話を持ってくる)(治安悪くなった)

 

“崩れゆく心”

今回から追加になったエリック、クリスティーヌ、シャンドンの三重唱。たつなりくんどんどんよくなっていったなあという印象です。

直前のキスシーンの話から始めていいですか?勝手に始めるんですけど!

100万回言ってるけどオフでの「愛してる(囁き)」はずるい!!!

花束持って登場するところはワンマンのミッキーでした。オペラ座前の花壇からでも摘んできたのでしょう。引っこ抜いたものをそのまま花束にしてプレゼントすな。(嘘です、伯爵家御用達の花屋さんから調達したのでしょう)

話は戻って三重唱ですが、シャンドンとクリスティーヌのキスシーンを見て絶望の淵にいるエリックと、幸せの絶頂状態の夢見るシャンドン伯爵でこのときの精神状態は天と地の差がありますよね。

これがメロディに表れていると思ったのが、

エリック:それでも呼ぶよ君の名を

シャンドン:夢の中で君の名を

のフレーズです。エリックパートは「そ(→)れ(↑)で(↑)も(↑)呼ぶよ」で上昇(音自体は下がってるけど「れ」で一気に上昇してその後も声は上に引っ張られてるから)、シャンドンパートは「ゆ(↓)め(↓)の(↓)な(↓)か(↓)で(↓)」で下降なのがブラームス交響曲第1番冒頭の半音階上昇のヴァイオリン、チェロと下降音形の木管、ホルン、ヴィオラの関係みたいだなあと思って聴いていました。これは2人の心の距離みたいでどんどん離れていく様子かなあ。2人は相容れないしクリスティーヌへのアプローチの仕方がまるで違うから。

それにしてもここのたつなりくんは低音が安定していたと思います。響かせ方はまた別問題としても、三重唱で一番下のパートが安定してるって結構重要ですよね。音がブレるといった問題は軽々クリアしてやっていたなあという印象です。これはブログで言っていましたが、高音に比べてどちらかと言うと低音は難しさを感じるみたいですね。テニミュで三部に分かれるときは安定の低音パートだったのでちょっと意外な気もしますが、ミュージカルの発声が変わったんですね。

 

 

“君をなくせば”

この曲本当に美しくて大好きです。メロディーラインもセットも。幕が開くと緑がかった地下が現れ、ゴンドラを漕ぐエリック。贅沢に使われたハープ。

この曲って薄暗くてお世辞にも綺麗とは言い難い地下の用水路的な場所で歌われていますよね。(パンフレットを読むと貯水槽かな?)

でも私は作中で最も色彩が鮮やかで夜の匂いがしてくる場面だと思いました。緑がメインのセットだけど濃いピンクや濃紺のイメージ。

ロマンチックなメロディーライン、ハーモニーにどことなく漂うドビュッシー感というか。ドビュッシー管弦楽のための『映像』のイベリアとか、ラヴェルマ・メール・ロワのパゴダの女王レドロネットみたいなイメージ。

 

 


Claudio Abbado "Images pour Orchestre No 2 "Iberia" Debussy

こちらの7:00あたりから第2曲が始まります。でも全曲通してとっても素敵な曲なのでぜひ聴いてみてください。

 


マ・メール・ロワ第3曲「パゴダの女王レドロネット」

 

どちらもスペインや中国を舞台に書かれた曲ですが、私の中で「フランスの作曲家から見た異国のイメージってこんな感じ」といった曲です。この場面にどことなく漂う東洋感みたいなものがあって、例えばエリックがクリスティーヌを運ぶゴンドラの船首の飾り。ドラゴンかな、タツノオトシゴかな。

フランス人が異国感を出しているところがあえてフランスっぽい、そんな曲です。対してフランス人が作ったフランス人らしい曲といったら“パリのメロディ”や“ビストロ”ですね。

イベリアの第2曲は“夜の薫り(Les parfums de la nuit)”と名前がついていて、夜道にどこからともなく漂ってくるかぐわしい花の香りをイメージして聴いてしまいますが、ファントムの“君をなくせば”もそんなイメージです。

スモークと照明の効果をふんだんに使って揺らぐ水面や靄を表現したりステージ上そのものも美しかったなあ。

 

“エリックの物語”

♪ランランランララン ランラララランラランラ

劇場を出た後思わず口ずさみたくなるランランランララン(ランランランじゃないよ)(走り続ける理由じゃないよ)(どすこいどすこいどすこいどすこい)(青7のせい)

少年エリックの天使のような歌声に毎回ウッ...(涙)となっていました。

それにしても晴香ちゃんって何者?!歌だけじゃなくてダンスもできるのね!

ベラドーヴァのバレエシーンでは手足の使い方がとにかく軽やかで羽が生えているみたい!アヴェ・マリアのコンテンポラリーは体が別の何かに乗っ取られてるみたいな異物感というか。「虫唾が走る」という言葉がぴったりな体の使い方。ジプシーから薬草を買ったベラドーヴァが自分ではコントロールできない何かが体を這っている感覚なのかな。保健の授業で薬をすると自分の体に虫が這っているのが見えるとか習ったでしょ?あんな感じなのかな...怖い...

 

“森の散歩”

2幕のセットの話を。

2幕の前半はエリックが住む地下を舞台に繰り広げられます。緑の幕で覆われたセット、天蓋付きのベッド、天使、バラの花、小鳥...全てエリックによって作られた幻想空間なのかな。クリスティーヌが地下に来ると子供部屋みたいな空間が出来上がり、クリスティーヌが顔を見て地下を去るとエリック自らが緑の幕を取り払い幻想空間を壊す。

エリックが大切に大切に作り上げた美しいもので囲まれた夢のような心安らげる黄金のテントは、呆気なく崩れ去る。なんて皮肉なことでしょう。

 

“母は僕を産んだ”

ファントムで1番好きなナンバーです。Apple Musicで城田さんが歌っているのを買いました。

城田さんエリックの“母は僕を産んだ”ではっとしたことがあって、それは歌い出し。

白い花びらが舞い低音が鳴るなか、地に伏せたエリックは呟くように歌います。

母は闇で僕を産んだ

でも僕の魂は 天使のように輝く

けれど僕は闇にしか住めない

この「けれど僕は闇にしか住めない」ですけど、「けれど僕は 闇にし...闇にしか 住めない...」って言い直すときがあって、しんどいしんどいしんどい!

エリックはウィリアム・ブレイクの詩を幼い頃から読み返していたんですよね、何度も何度も。地下に篭って外との関わりはキャリエールぐらいしかなく、ブレイクの詩もキャリエールさんが幼いエリックのために持ってきてくれたんでしょうか。それとも亡くなったベラドーヴァの形見でしょうか。

空で言えるくらい読み込んでいたその詩は絶望の中にいても口をついて流れるように出てきます。でも「けれど僕は闇にしか住めない」で自分が本当に闇にしか住めないことを悟ってしまった。その現実を思い知ってしまった。だから絶望した。

辛いのは城田さんが歌詞の言葉をそのまま辿るように紡ぐことです。直前の「天使のように輝く」なんて微笑みながら宙に手を差し出すんですよ。本当に自分の魂は天使のように輝くと信じてやまないように。

そこから先もエリックは言葉の意味を噛みしめながら歌います。歌詞の美しさを咀嚼すると自分の心が美しくなるみたいに歌っているのが印象的でした。敬虔なエリックそのものだなあと思いました。

「ああ 片隅の地に生まれ」ってところで毎回涙腺が弱くなってしまって、どんなに悲しい歌詞でも美しいメロディに乗せて歌うのが余計泣ける。

それからエリックって本当に優しい人なんだなあと思うのが「僕が雲を作ろう 君は神の膝でお眠り」。「お眠り」の言い方がね......小首傾げながら「お眠り?」なんて言うもんだからエリック〜〜お前ほんとにいいやつだよ〜〜〜になってしまう。すごいよ城田さん。だって本当に神様と対話してるみたいに歌うんだもの。

ところが美しいメロディに乗せながらも「僕に背くならば!」から語気が荒くなります。“世界のどこに”と同じようにエリックの二面性が出ている部分だなあと思いますが、前半までの神への美しい祈り、母やクリスティーヌへの愛と平行して歪んだ感情が存在している。台詞でもありましたね、「もっといい場所に早く行けるだけさ」と。

ここの怒りの表現がお二人ともすごかった、すごすぎて怖いくらいだった。最後の「クリスティーヌ!」って叫びも真っ直ぐ愛を叫んでいて毎回泣いてました。

 

 

 

 

 

ということで長々と振り返ってしまいましたが、私はたつなりくんのオタクなので最後はやっぱりたつなりくんの話で締めたいと思います。

今回のシャンドン伯爵は難産だったようで、FCイベントでも初めてWキャスト(という制度)が嫌だと思ったって言ってました。「ヒロくんのシャンドンは僕がやりたかったシャンドンだった。僕が行きたかったところにいた。だから悔しかった」と。

そんなときに「たつなりらしいシャンドンって何かなって考えてみたんだけど。たつなりの良さって笑顔だと思うんだよね。あと真っ直ぐなところ。それをシャンドンに生かしてみたら?ヒロみたいなスマートでかっこいいシャンドンをやりたいんだろうけど、そんな伯爵もいるんじゃない?」と声をかけてくださった城田さん。ありがたいねえ...役に忠実になることで自分を殺すんじゃなくて自分の個性を活かす方向で演出をつけてくださった。たつなりくんはいいカンパニー、いい共演者の方に恵まれているなあとどの作品でも思います。

 

冒頭の「〜が〜をする物語」に戻りますが、ファントムでのたつなりくんを表すとこんな感じかな。

たつなりくんが自分のシャンドンを見つけ出す物語

たつなりくんが自分らしさを見つめ直す物語

 

 

2019年も終わりですがたつなりくんのおかげで本当に楽しい1年でした!2020年のさらなるご活躍を楽しみにしております!突っ走っていくたつなりくんを見失わないようにこちらも全力でついていきたいと思います。

 

千秋楽の“闇が広がる”のお話

 

8/25ソワレの“闇が広がる”は、たつなりくんがエリザベートという作品に向き合って舞台に立ち続けた3か月間、いや、たつなりくんが役者さんになってからの数年間が試された約4分間だったように思える。

 

いついかなるときも最高のお芝居をすることが正解だとしても、やはり千秋楽は私の中で特別で、今までの公演で積み重ねてきたものの集大成という意識で観てしまう。

 

舞台上でミスは起きないに越したことはない。そもそもそんな事態を招くべきではないということは重々承知している。

 

それでもあの日のたつなりくんのお芝居をミスという一言で片付けたくないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

8/25夜公演のたつなりくん千秋楽のお話。

この日のルドルフはマチソワ共にたつなりくんで、トート閣下はマチネが古川さん、ソワレが芳雄さんだった。

本当のことは芳雄さんとたつなりくんにしかわからないし、私はこう捉えたというだけのお話なので、以下のことは戯言として読んでいただければと思います。

 

 

たつなりくんの千秋楽であるこの日を、私は特別そわそわするということもなく、今日までよく頑張ってきたなあという晴れやかな気持ちで迎えた。どちらかというと、いつも初日の方が不安いっぱいでドキドキしながら劇場に向かっている。

マチネではカテコでの子ルド役陣慶昭くんとのかわいらしいやりとりにほっこりし、ソワレ1幕ではルドルフバイトの安定のかわいさに「今日も最高!」とエーヤンたつなりくんだった。(なぜハンガリーで旗を食べたかの謎はいまだに解き明かされていない)

 

そして2幕。

 

場面は進んでいき、コルフ島での“パパみたいに”の次はいよいよ青年ルドルフの登場だ。万里生さんフランツとの“父と息子”の対立シーンの後、“闇が広がる”が始まる。

ここはルドルフの見せ場であると共に難所でもあると思っているので、観ているこちらもついつい力を込めて舞台上を見守ってしまう。

熱量のあるお芝居が進んでいく中、

 

世界が沈むとき 舵を取らなくては

僕は何もできない 縛られて

 

ここで思わずドキッとした。熱がこもりすぎたためか、ルドルフの「僕は何もできない 縛られて」でテンポが遅れてつっかえてしまったのだ。少なくとも私が観劇した十数回のうち、たつなりくんがこの箇所で失敗したことはなかった。それがよりによって千秋楽のこの回に起きてしまうとは。

たった一瞬、今日初めて観る人がいたら気が付かないかもしれないほどの、ほんの僅かなズレだった。しかしこのときの私は「どうしよう...どうしよう...」と頭の中が真っ白になって泣きそうになった。ここからたつなりくんはどう出るんだろうと、じっとオペラグラスを構えて見つめることしかできなかった。

 

不幸が始まるのに 見ていていいのか

未来の皇帝陛下 

 

「縛られて」で自分の体を抱きしめながら座り込むたつなりくんルドルフ、そして「不幸が始まるのに」からズイッ...ズイッ...とルドルフに迫りどんどん追い込んでいくトートというのがこれまで何十回と繰り返されてきた演出だ。しかしこの日のやりとりは一味も二味も違うように見えた。

芳雄さんトートの「不幸が始まるのに見ていていいのか?」という問いかけがいつも以上に容赦なく殺気立っているように感じたのだ。

対するたつなりくんルドルフは眉を潜め、イヤイヤをするように首を横に振りながら後ずさる。

まるで芳雄さんに「お前はこのまま終わっていいのか?」と問い詰められたたつなりくんが苦悶しながら答えを導き出しているかのように見えた。

そして立ち上がったルドルフは叫ぶ。

 

我慢できない!

 

まるで闘志に火がついたようだった。不屈の精神、不撓の姿勢とはこのことか。たつなりくんの声も表情も今までと全く違った。

いつもは起こらないことが起き、追い詰められた末にたつなりくんが選んだのは、さらに攻めるという選択肢だった。

これはよくできたシナリオかというほどの劇的な展開に思わず涙がこぼれた。

トートに扇動され革命に立ち上がったルドルフと、逆境に立ち向かったたつなりくんがシンクロして見えた。

 

この局面で守りに入らず、逆境を攻めに変えたたつなりくんに思わず感服してしまう。それと同時にたつなりくんを恐ろしいとも思った。自分のメンタルを瞬時に切り替える強さ、リカバリー力、冷静な対処力、勝負師のような爆発力。たつなりくんの、舞台に生きる役者としての矜持のようなものも感じた。

 

また、この人に千秋楽とか終わりとかいうことは関係ないのだとも思った。たぶんたつなりくんは舞台に立ち続ける限りその一瞬一瞬を生きて戦うんだろうな、と。そう考えるとたつなりくんを応援させていただいていて、舞台上で生きる軌跡を追えている今このときに感謝してもしきれない。

 

歌もお芝居もシンプルに上手い役者さん方と共演するたつなりくんを見ていると、「まだまだそんなもんじゃないだろう?」「それで満足したわけじゃないだろう?」と上へ上へ引っ張られているような感覚だ。エリザベートという作品は、小手先で取り繕われたものは洗いざらい暴かれて、余計なお飾りは通用せず、役者の真価が問われる舞台だったと思う。

 

そんなたつなりくんがインタビューで「今1番楽しいと思えるのがお芝居だから他の仕事をする自分は想像できない」と言ってくれたことにとてつもなく感動したし、幸せを感じてしまう。今までのお仕事で吸収したこと全てを糧にして、これからもたつなりくんが楽しんでお芝居ができたらと願うばかりだ。

 

 

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』を観た話

エリザベートの大千秋楽も無事に終わり、テニミュ全国立海の東京凱旋公演が始まるまで我々おたくもお休み期間ということで、今更ですが木村達成さんがベンヴォーリオ役で出演したロミジュリ2019の総括を書こうと思います。

 

終わったの4月じゃん!もう記憶の彼方だよ!っていう思いもありますが笑 DVDも届いていることだし再生しながら振り返りますね。

 

以前東京公演が終わった時点での感想もあげていたのですが、そのときは物語の中のベンヴォーリオというキャラクターにスポットを当てて書いたので、今度はたつなりくんのお話もたくさんしたいと思います!

 

 

2/24夜 大野・木下・木村・黒羽・廣瀬・大貫

3/2昼 古川・葵・木村・平間・渡辺・大貫

3/3夜 古川・生田・木村・黒羽・渡辺・大貫

3/10昼 大野・葵・木村・黒羽・廣瀬・大貫

3/23夜 古川・葵・木村・黒羽・廣瀬・大貫

4/13昼 古川・葵・木村・平間・廣瀬・大貫

4/13夜 大野・木下・木村・黒羽・廣瀬・宮尾

 

マーキューシオ

こうして見るとマーキューシオはまりおちゃんが多かったですね。たつなりくんとまりおちゃんのベンマキュは相棒感が強いのが好きでした。やっぱりこの2人が並んでお芝居しているのを見るとエモ!!!!!って胸がいっぱいになります。

 

 

青学7代目*1 華の93年組のうちの2人。「スクールカーストが高くて街のやんちゃ者だけど何でもそつなくこなすし、やるときゃやるから人望があってみんなに慕われている」っていう私の中の青7像が、モンタギュー家のリーダー、ベンヴォーリオとマーキューシオにリンクしていたなあと思います。(※個人の感想です)

 

テニミュでは上パートをまりおちゃん、下パートをたつなりくんが歌ってたのがロミジュリでは逆転してたのも新鮮だった!

主に“綺麗は汚い”かな?ここのベンマキュめちゃくちゃ可愛かったなあ!乳母が登場する前のUFO日替わりネタもたつなりくん頑張ってたね笑

東京公演千秋楽でテニミュ2nd四天宝寺公演のD2日替わりネタを入れてきたのもうれしかった〜!

 

 

あと手鏡をラケットにしてサーブを打つたつなりくんベンヴォーリオとか、カテコで青4の渡辺さん古川さんペアと青7のまりおちゃんたつなりくんペアでダブルスしてみたりとか。(ここでは敢えてテニミュの番手順で書きましたが...)見えないネットを挟んでボールを打ち合う4人に思わず笑ってしまった笑

 

平間さんのマーキューシオはセクシーっていう言葉がぴったりな気がします。マブの女王......好き......何回も再生しちゃう。平間さんって特段エロいことしてないのに全身からエロい香りが出てる(は?)(色気って言って?)

あと平間さんといえばダンスですね!“世界の王”は目が離せなくて!ダンス踊れる人って素人目に見てもなにかが違う!同じ振り付けを踊っていても足の運び?体感がいいのかな?引き込まれました!

たつなりくんとまりおちゃんの組み合わせだとマブダチ感が強かったけど、たつなりくんと平間さんの組み合わせだと一気にたつなりくんベンヴォーリオがロミベンマキュの中で末っ子になる化学変化が面白かった。

それから“決闘”からの“マーキューシオの死”も大好きだった...平間さんのマーキューシオ、狂ってる!と思えば思うほど悲しさも増すんだよね。死に際の乾いた笑いも辛かった。

 

ロミオ

そしてロミオのお二人。

まずは大野さん。爽やかで裏表のない笑顔〜!分け隔てなく好印象を振りまく男〜!って印象でした。ジュリエットに対するアタックの仕方もガッツ!歌声もガッツ!ガッゲッガッ!ガンガンドンドン!(突然始まるテニミュ)

そして古川さん。たつなりくんが共演させていただくのもエリザで2回目になったということもあり、今でこそ古川さんファンの方による愉快なエピソードをたくさん目にするようになりましたが(笑)、最初は偉大すぎて越えられない壁のようなものを感じていました...

♪女たちは僕のことを 追いかけてくる 何もしなくても

う〜ん分かるわ〜されてそう〜そしてなにが起こったかわからないまま笑顔で受け流してそう〜(勝手なイメージです)

エリザのときもでしたが、古川さんがフェイクを入れるとたつなりくんもそれに触発されてアレンジを入れてくることが多かったなあという印象です。

 

たつなりくんのお話

たつなりくんは前作を観たときにマーキューシオをやりたいと思ったって言ってたけど、私はベンヴォーリオ役で受かってよかったなあって思っています。その理由としては、ベンヴォーリオの根っこにある人が良くてお茶目でプリティなところと、2幕で絶望に落ちていく闇の部分の両方が味わえておいしいからです!!(欲望に忠実なおたく)

だって“憎しみ”後のモンタギュー夫人との会話、「僕がロミオーー!!って叫ぶとプイッと向きを変えて森の奥へ消えてしまった」の言い方めちゃくちゃ可愛かったんだもん...“綺麗は汚い”の振り付けもあざとかったんだもん...たつなりくんの手が大好きなんですけど、♪あばーたもえくーぼさーのほっぺクルクルする振り付けのかわいさエグいわ〜〜あの衣装の萌え袖から覗く指の綺麗さもやばい。

 

隠しきれていないお育ちの良さがずるいたつなりくん

たつなりくん、「うまい」じゃなくて「おいしい」って言うところとか、お箸の持ち方が綺麗なところとか、マイク両手持ちするところとか...ぽろっとお育ちの良さが出てきちゃうところが好きです。

エリザ初日のカテコのお辞儀の仕方やばくないですか?!

これ現地で見てて思わずひえ〜〜好き〜〜!ってのけぞりました!!なんせ皇太子ルドルフだもの、お育ちの良い人がお育ちの良い役をやってるんだもの。そりゃあ限界突破してくるよね...

 

それでロミジュリのお話ですが、今回たつなりくんが演じたのはヴェローナの由緒正しき家柄モンタギュー家のベンヴォーリオ。ただし敵対するキャピュレット家の連中とチンピラみたいな喧嘩もする。

格闘シーンで殴り合ったりアクロみたいなアクションを入れるのも舞台上で映えていて好きでしたが、注目ポイントは何気ない日常シーンの仕草ですよね!

例えば“ヴェローナ”で大公が登場したときの胸に手を当てながらのお辞儀。カテコでも同じようなお辞儀をしてますけど、手はもちろんのこと、足の揃え方さえ美しい。左右をずらして片方の足をちょっと引くところとか好きすぎる。それまで治安が悪かったのに一気に醸し出されるロイヤル感!

それから仮面舞踏会でも!色んな女の子にちょっかいかけて遊び人のチャラ男をやってるくせに、女の子とペアになってダンスをするときは、「ダンスのレッスンとかまじだるくて勘弁。でもガキの頃から仕方なくお袋にやらされてたんだよね??嫌々だったよ?もちろん。...まあやればできるけど」って言うベンヴォーリオくんの姿が見える!見えます!!このベンヴォーリオくんにはダンスは標準装備として身についてます。チャラいようでしっかり教養はあるんです。

たつなりくんのお育ちの良さとベンヴォーリオがリンクして、ヤンキーさと家柄の良さのさじ加減が絶妙なたつなりくんのベンヴォーリオになっていたと思います。

 

 

絶望のお芝居をするたつなりくんが好き

そして闇が広がったときのお芝居に定評がある(?)たつなりくんですから、2幕でグイグイ引き込まれてしまいました。

 

 

これ、いつ話してくれたんだか定かではないんだけど(多分カレイベ?)「親友が亡くなってしまう絶望感に、仲間がまとまらなくなってしまうときの哀れさ」って好きな言葉です。

“狂気〜服毒”でモンタギューのみんなが♪復讐するのだ 命は惜しくないぞって歌うのに対して、ベンヴォーリオは♪みんな早まるな 頭を冷やせ 挑発に乗るな マーキューシオの喪が明けるまで 待つんだ!って諭すんですものね。マーキューシオという大親友を失った今、ベンヴォーリオは仲間たちに「命は惜しくないぞ」なんて軽々しく口にしないでほしいだろうなあと思って、分かり合えない溝を感じました。

そういえばベンヴォーリオっていつもロミオやマーキューシオのために走ってたなあ。

「人の血の中に毒が流れてる」ヴェローナに生まれ育ちながらも、ベンヴォーリオは他の人々と一線を画していて、平和志向なところが垣間見える感じがしました。たつなりくんのベンヴォーリオの仲間思いで優しくて愛に溢れているところが大好きです。

 

随所でその優しさが表れていました。

ここ、親鳥が羽を広げて小鳥を守っているようだと言っている人がいて本当に言い得て妙だと思いました。

 

たつなりくんが誰かを抱きしめているときの相手の首への頭のうずめ方が好きです(伝われ)

 

霊廟のシーンもよかったです。特に刈谷公演は音響がよかったのもあり、ホール全体が霊廟になったみたいで壁に歌声が反響していました。ベンヴォーリオ最後のソロ♪今 許し合おう〜で眉をキュッとさせて泣き出しそうになっているたつなりくんの表情が好きでした。

 

 

たつなりくんって優しい死刑執行人になるときがある

ハイステの“勝者と敗者”の話になりますが、焦りから速いテンポの攻撃を仕掛けてしまい自分の“王様”の影に崩れたセッター影山に代わり、選手交代でコートに入った菅原。しかし正攻法のセットアップゆえに次第に敵に捕まっていき、再び影山がコートに入るシーン。3年生ながら正セッターではなく控えセッターというスガさんの限られた出番をある意味断ち切ったのが影山。この影山を演じたたつなりくんがコートINするシーン、何回見ても鳥肌が立つんです。ステージ後方センターに立ち、静かな表情でコートを見据え、ゆっくりと右手でメンバーチェンジの札を上げる。

なんと美しく残酷なことか。

本人は真っ直ぐ先を見据えていて、結果としてそれが正しい方法なんだけど、同時に人の息の根を止めている。

これが先述した死刑執行人のたつなりくんです。

 

同じようなことがロミジュリでも起きていて、それが“どうやって伝えよう”の後の、ロミオにジュリエットが亡くなったと伝える場面です。

 

 

いくらベンヴォーリオがロミオの気持ちを汲んでこれ以上傷つけないように優しく優しく言ったとしても、ロミオを死に加速させてしまったきっかけはこれですよね。

 

これに付随して、と言いますか。ベンヴォーリオのソロ、“どうやって伝えよう”のお話。

 

たつなりくん、グランドミュージカルは2018年のラ・カージュ・オ・フォールに続いてロミオ&ジュリエットで2作目です。以前ラカージュ初日にたつなりくんジャン・ミッシェルの歌の上達具合にびっくりしたと書きましたが、それでも今思うとボロが出ていたなあと思うわけです。

例えば“アンヌと腕を”の♪物事しっくり いかないときも 突然に!出し抜けに!変わるのさ〜の「さ〜」とか、♪魔力に惹かれた不思議な出会い 夢うつつ 星空を 散歩してるみたい〜の散歩して「る」とかね。高音が特にだけど、喉を絞って出していて喉にも耳にも悪いなあと思うことがありました。ラカージュの話してたら観たくなった!ラカージュ観たい!再演待ってます!

でも!ラカージュのときはそれまでたつなりくんが歌ってるところは海堂薫の低音でしか知らなかったから、当社比でめちゃくちゃ高い音も出していて、歌いけるんだなあ!って思っていたんです。ロミジュリも、木村達成はこのジャンミッシェルの歌い方で来るんだとばかり思っていたんです。そしたら“ヴェローナ”の歌い出し、♪例え軍隊が止めに入ったとしても〜で「えっ?!今歌ったの誰??めっちゃ好きな声なんですけど!!えっ!!たつなりくん??好き!!」ってなる現象が起きました!笑 よかったね!(おたくの脳内平和すぎて笑う)

 

 

(初日のテンション怖いな)

 

喉で声を出すんじゃなくて鼻腔に響かせて胸に共鳴させている感じがする。そのせいか元々よかった滑舌がもっと良くなってる!これはエリザベートでも実感しました。特にア母音と鼻濁音の響かせ方が上手だった。「俺には分かる 君の痛みが」とか。エリザで言うと「ママと僕は似ている 分かり合えるはずだった」「世界が沈むとき 舵を取らなくては」「僕はママの鏡だからママは」とか。

しかも本人は破天荒で尖ってる性格をしているのに(本人曰く「丸くなるな星になれ」)歌声は癖がなくて周りと協調しやすいのも好きポイントです!今まで海堂や影山で鍛えてきた低音は磨きがかかってチェロみたいな響き方をするときがある!「俺たちの青春が 終わったことを」で次第に音が上がっていくところの音の切り替わり(境目)も弦楽器っぽい。

 

それから200回公演記念イベントでロミベンマキュの6人が歌った“本当の俺じゃない”のたつなりくんもとてもよかったなあ!サビの「本当の俺は違う」の「ほん」と「とう」の音の跳躍が最高!ティボルトをやるたつなりくんもちょっと見てみたくなったもの!

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで2月後半から4月半ばまで駆け抜けたロミジュリですが、たつなりくんの千秋楽挨拶は印象的でした。まりおちゃんの「ロミジュリはゴールしたけど僕はやっとスタート地点に立ったと思っている」という言葉を受けて、

「稽古場で何もできなかった僕が今までベンヴォーリオをやらせていただけたのはカンパニーの皆さんのおかげです。まりおが言ったように、僕もスタート地点に立ったばかりです。さらなる高みを目指して、また皆さんの前に戻ってこれるように頑張ります」

もうかなり前のことなのでだいたいのニュアンスで申し訳ないんですけど。

ロミジュリ公演期間中にあったカレイベでも、ロミジュリの歌はとにかくキーが高いっていう話題で、「あれポテンシャルじゃなくて努力の上に成り立っていますから!」と話していて、ちょっとびっくりしました。

たつなりくんが「何もできない」とか「努力しました」ってはっきり口にするのは珍しいと思ったからです。

たつなりくんのおたくがよく聞く他の役者さんからのたつなりくんの評価ってざっくり言うと、「あいつ本当に器用でね〜何でもできるよね〜器用にこなすんだよね〜!」って感じ。(本当にざっくりまとめた)

元々ポテンシャルの高さも武器として持っていたと思うんだけど、ポテンシャルが高いなりにもちろん壁にぶつかることもあったと思います。でもたつなりくんは「頑張るのが当たり前、やるのが当たり前」*2って自分でも言ってる人だから、本人の口から「(稽古のときは)何もできなかった」って言われると、ああ本当に本当に本当に頑張ってここまで来たんだなあ、当たり前にここに立っているんじゃないんだなあってジーンとしてしまいました。梅芸のキラキラの光を浴びてステージに立つ、やりきったぞという清々しい表情も相まって。

 

 

というわけでこの時点で無事にエリザベート2019も千秋楽を迎え、10月には朗読劇の恋を読むvol.2『逃げるは恥だが役に立つ*3が、11月からはミュージカル『ファントム』*4が始まります。来年の情報解禁も楽しみにしつつ、さらなる高みを目指すたつなりくんを応援できればと思います!